事業報告

市直営施設の予約決済DX化

はじめに

市の自然公園としてキャンプやBBQ施設が完備された無人島 龍王島。今までに行ってきたLINE公式アカウントでのアンケート調査やモニターツアーから国内外問わずニーズが高いコンテンツであることが伺えました。

LINE公式アカウントを活用した観光ニーズ調査2022

施設の稼働率を高める上での現状課題を洗い出し、一つ目のボトルネックと考えられる予約決済方法のDX化を今回、市や関係団体と連携して行いました。

目的

現状の申込決済手段では、必要情報を記入した申込用紙をFAXで送付し、後日郵送される納付書をもとに金融機関から必要金額を振り込む必要がありました。

コンテンツ力があるにも関わらず、この予約決済方法が施設稼働率に大きな影響を与えてしまっていることがモニターツアーなどから伺えたため、ディスカバー東広島として以下の目的を定め、当施設のDX化に取り組んでいきました。

  • 予約決済のDX化により受入環境整備を行い、ユーザビリティを高めるだけでなく、予約決済管理をDMOが担うことで消費データを取得し、デジタルマーケティングを促進させる。

取組内容

団体戦略への反映と行政との調整

道の駅などの物販・観光のゲートウェイとなる施設はあるものの、東広島市において一定の資本を投下して造成された観光拠点は龍王島を含め数か所しかありません。

DMO設立当初から龍王島は国内外からも集客することができるコンテンツになると考えていましたが、着手するには一定の業務量が発生することが見込まれ、その費用対効果を検討するデータ的な根拠がなかったため、団体としての取組に落とし込むことができず、今まで具体的なアクションをとることができませんでした。

よって昨年度(2022年度)からアンケート調査やモニターツアーを複数回実施することで満足度や推奨度調査を行い値が高いコンテンツであることが改めて明らかになったため、社員総会時の団体戦略へDX化による受入環境整備を取り組んでいく旨、明記することで2023年度の組織決定へと落とし込んでいきました。

特産品の消費促進と無人島コンテンツアンケート調査

そしてまず初めに、市の担当課を含む観光やシステムを主幹とする課とキックオフミーティングを実施し、オンライン化への意向確認を行い、方針決めと具体的に必要となる業務の洗い出しを行いました。

オンライン化する上で重要な点は以下の2点となりました。

  • 現状の申込や問合せ対応を行っている団体との合意形成
  • 第三者(DMO)が代理納付者として利用料を市に納付する契約締結

合意形成

市からの委託内容に則りオンライン予約決済後も問合せ対応や管理人の配置を担当する東広島市シルバー人材センターとは昨年度のモニターツアーや、FAMトリップの調整によってすでに関係性を構築することができており、満足度や推奨度のアンケート調査結果もフィードバックを行っていたため、DX化の必要性に関する意見交換をスムーズに行うことができました。

さらに島内でシルバー人材センターが収集している利用者アンケート調査でも、申込に関する設問で「申込しにくい」という回答が多かったことから、シルバー人材センターとしても兼ねてより課題感を持っていました。

DX化後もDMOから予約管理画面の操作やシステム的な問合せへのフォローなどの伴走支援を行う旨、説明を行い予約決済のDX化を受け入れてくれることになりました。

指定納付受託者制度

外部予約システムを活用して、市が管理する施設の利用料金を市職員以外が徴収するには指定納付受託者制度(地方自治法第二百三十一条の二の二 他)により収納代行者を指定する必要があります。

指定納付受託者については、総務省がその要件を定めており、ディスカバー東広島がその要件を具備しているかどうかの確認とディスカバー東広島の予約システムではなく、外部による予約システムを活用した場合の利用料金の徴収及び納付の是非など、法的な問題について法務相談により確認するとともに、市の適正な資格審査を得たうえで、指定納付受託者の指定を受けました。

スキーム構築と操作マニュアルの展開

DX化することにより、今までの業務工程の見直しを行う必要がありました。全体的な流れをDMOにて作成し、誰がどのタイミングで何をするのか、市担当課とシルバー人材センターと協議を行い、スキームを構築していきました。

また外部予約システムの操作マニュアルや島内の管理人への案内文等も作成することで、オンライン移行後も支障なくスムーズに業務を行えるように準備を進めました。

外部サイトの選定

CRMが実装でき、且つ、今後インバウンド誘客も見込んだ多言語対応が可能となる外部システムを複数比較検討し、試験的にイベント等で導入することでDMOとして求める機能だけでなく、ユーザーの利便性を有しているシステムを選定していきました。

地域イベントのDX化による持続可能な賑わい創出

また外部システムだけでなく、大手OTAサイトやキャンプ施設の予約プラットフォームに掲載することも検討しましたが、周囲1.6㎞の小さな無人島となる当コンテンツの魅力は都会の喧騒から離れ、オフ・ザ・グリッド旅を提供することにあり、満足度を下げる程の密な集客を必要としないと考えました。

今後、指定管理者などの民間によってコンセプト決め、ブランディングを行う際に不特定多数の集客ではなく、少人数に高付加価値の体験を提供する方向性へとスムーズに向かえるように、あえて集客力やプロモーション力に優れるOTA等への掲載は選択しませんでした。

ランディングページを公式WEBサイト上に作成

渡船を伴う無人島でのBBQやキャンプ体験となり、初めて利用される方に提供すべき情報が多岐にわたるため、ディスカバー東広島の公式WEBサイト上にランディングページを作成することにしました。

今回、選定した外部予約サイトには予約カレンダーを埋め込む機能があり、構築したランディングページに予約カレンダーを埋め込むことで、情報収集から予約までの動線をシームレスにし、離脱率や直帰率を下げ、CVRを高めることを狙いました。

また全国的にも珍しいアウトドア整備された無人島の情報提供と予約決済をDMOの公式WEBサイト上で完結させることで、一定のユーザー(閲覧者)を集めBBQには欠かせない特産品の情報ページへの動線も今後整備していくことで、オウンドメディアの発信力の強化も狙っていくことにしました。

実際のランディングページはこちら

おわりに

スキームの最適化

DX化の導入時期が比較的利用客数が落ち着く10月からとなったため、来期のアウトドアシーズンまでに現場オペレーションノウハウを蓄積し、市とシルバー人材センターと連携してDX化スキームをPDCAサイクルによって最適化させていきます。

そして2024年度4月頃から本格的にセールスプロモーションやFAMトリップなどを行うことで利用者数を増やし、且つ、満足度の高いサービスを提供することで、リピーターの獲得や口コミ効果の波及に繋げていきます。

次なるボトルネックへの取組

今回、第一階層目のボトルネックである予約決済手段に着手しましたが、龍王島が今後、県外や国外からの集客を実現し、特産品の消費促進につながる観光拠点になるためには第二、第三のボトルネックとなる渡船のキャパシティ確保や施設のリノベーション、アクセス改善を行っていく必要があります。

一方で今回のDX化が実現できた大きな要因の一つにDMOに常駐スタッフとして勤務する市からの派遣職員の存在があります。庁内にある複数の関係課をコンセンサスを得ながら横断し、契約締結を行う業務スキルをDMOのプロパ職員が習得していかなければ、次なるボトルネックを解消することは難しいと考えています。

アンケート調査による方向性決め

今回、アンケート調査等のデータ的根拠によって組織決定や合意形成を行うことができDX化を実現することができました。

島内で行っていた紙ベースのアンケート調査もオンラインフォームに落とし込み、関係者間での情報共有をスムーズにするだけでなく、ブランディングなどの今後の展望に向けてのエビデンス取りを開始することで、データドリブンによる観光地域づくりの風土の醸成を行っていきます。

公共施設のDX化とデジタルマーケティング

そして龍王島の予約決済のDX化に伴いディスカバー東広島として初めて、利用者人数や属性だけでなく、推奨度や観光消費額、リピート率等の消費データを通年で取得することができることになります。

東広島市内には龍王島以外にも公共施設やニーズの高いアウトドア施設があり、一部の施設は電話による申込のみとなっています。今回、蓄積することができたDX化ノウハウを他の拠点でも展開し、DMOとしてより多くの消費データを取得することでデジタルマーケティングの精度を高め、セールスプロモーションの最適化や商圏拡大による地域消費拡大に結び付けていきます。

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