事業報告

地域イベントのDX化による持続可能な賑わい創出

はじめに

東広島市河内町にある自治協議会さんが中心となって鮎のつかみ取りイベントを実施しています。

イベント風景記事はこちら

毎年大盛況の当イベントですが主催者の高齢化や担い手不足などの課題にも直面しています。

地域DMOとして、今回、主催者の負担を少しでも軽減できるように、イベントの予約決済や受付業務のDX化支援を行いました。

支援目的

昨年の予約と受付の流れは、Googleフォームで予約受付を行い、イベント当日に受付窓口で予約者リストと名前を照合し、その場で現金精算を行っていました。

予約者数だけで約1,000人となる当イベントの予約問合せ対応や電話による変更、キャンセル対応、当日の運営などの業務負担はとても大きなものがありました。

よって今年は予約だけでなく決済もWEB上で完結させ、当日来場した方々と予約者リストの照合をQRコードによって行うことで、受付業務負担を軽減する取り組みを行いました。

そしてディスカバー東広島として今回のイベント支援にあたる目的を以下に設定しました。

  • 予約決済、現場オペレーションのDX化を試行することで主催者の負担を軽減し、地域イベントを持続可能なものにする。

イベントと取り組み内容

実施日 2023年7月30日(日)9時~15時半
予約者人数 1,200名(満員)
参加費 1,000円/人
主催者 リバーサイドフェスティバル実行委員会

中国新聞掲載記事はこちら

外部システムの導入

多種多様な旅行商品やイベントを予約システム上で表現するには、自由度の高い設定が可能となることが求められます。

ディスカバー東広島も公式WEBサイト上で予約システムを構築していますが、今までに多くのイベントを実施する中で各商品にあった柔軟な設定を行うことが難しい場面もあり、システム更新をしようにもコストが嵩んでしまうという課題を抱えていました。

今後、インバウンド向け商品の掲載や顧客関係管理(CRM)の促進など時代に合わせた予約サイトの運用が求められる中で、引き続き内製でサイトの保守点検を行っていくことと外部サイトを利用することとの費用対効果を検証するため、当イベントは試験的に外部予約決済システムにて運用を行いました。

外部システムの選定にあたっては観光庁やその専門家が推奨するサービスを比較検討し、今回Nutmeg社が提供するシステム上でサブドメインを取得し、予約サイトを構築しました。

実際の予約決済サイトはこちら

午前2回・午後2回、合計4回に分けて各回300人の定員にて実施される当イベントを外部サイト上で効果的に表現するために以下の設定を活用しました。

  • 複数の催行時間とそれに伴うキャパシティの設定
  • 予約受付期間の設定(2日前17時以降は不可)
  • キャンセルポリシーの設定(5日前に50%3日前に100%のチャージ)
  • 予約者自身による予約内容の変更やキャンセル処理
  • 支払い方法の指定(クレジットカード決済)
  • QRコードチェックイン (予約者に対するQRコードの発行)

DX促進の配慮

オンライン予約決済を導入するにあたり、デジタルに馴染みがない方や決済手段を持ち合わせていない方からの問合せが予想されたため、予めディスカバー東広島に直接、連絡があった際は、電話予約を受け付けることとしました。

しかし電話での予約内容の変更やキャンセル対応は業務負担が大きく事前決済も不可となるため、オンライン予約決済を促進する目的で、イベントのランディングページ上では電話受付を補助的に行っていることは記載しませんでした。

オンライン上での予約は396(1,163)であったのに対して、電話での予約は14(37)となり、ECなどの普及に伴い、地域イベントでもオンライン予約やクレジットカードによる事前決済を導入しても大きな支障が出ないことが伺えました。

キャンセルポリシーの導入

過去に当イベントでキャンセルポリシーを設定したことがなかったため、リピーターの方々からクレーム等が発生する可能性がありました。

よってキャンセルポリシーを新たに導入したことを周知するため、予約サイト上での記載や予約決済時の同意欄の設置、予約後の自動返信メールによる案内を実施しました。

また主催者とクレームが発生した際の対応として、地域のイベントを持続的なものにしていくため導入したことを予約者に説明していく旨、予め決めておきました。

結果的にチャージが発生する1週間前に9件のキャンセルが発生しましたが(予約受付開始から1週間前までは1件のみ)、すべて定員まで再販することができ、チャージ期間内のキャンセルは2(参加費の50%チャージ)に抑えることができました。

また予約をしたものの当日、イベントへ来場がなかったノーショーは12(26名 全参加者の2.2)発生しましたがチャージを確保することができました。

予約者に対してもキャンセルポリシーが周知され、適切なタイミングでキャンセルの処理が行われたことが伺え、また予約時の同意欄の設定等の効果もあり、幸いイベント終了後もクレーム等が発生することはありませんでした。

昨年までは事前キャンセルは在庫の編集をエクセル等でマニュアル管理し、その都度、再募集をかけており、また当日のノーショーに対しては再販の機会損失となっていましたがDX化によって業務負担だけでなく収支面での負担も軽減することが可能となりました。

QRコードによる受付

受付に配置できる人員にも限りがあり、また真夏の炎天下で行われるイベントとなり参加者が屋外の受付窓口に並ぶ時間を極力少なくするため、QRコードチェックインを導入しました。

外部サイト機能を活用して予約毎にQRコードを発行し、自動返信メールにて予約者に送付しました。

当日のQRチェックイン対応は2名で実施しましたが、1組につき10秒程度で完了することができました。約400組のチェックイン対応を行いましたが、予約者はほとんど待ち時間もなく、ピーク時でも23人が列になる程度と、参加者・運営側双方にとって良い現場オペレーションを実現することができました。

市内在住外国人の方々が地域イベントに担い手として参加

現場のオペレーション人員が不足しているという課題も主催者から共有いただき、ディスカバー東広島にて実施しているVFR戦略との掛け合わせも行いました。

VFR促進企画|ホタル観賞ツアー

地域イベントに担い手として参画を希望するとアンケート調査で回答した市内在住の外国人の方々に対して、優先的に案内を行い、ボランティアツアーとして実施しました。

ツアー参加者には受付業務等を担ってもらい、予め設けていた時間で適宜、一般の参加者と一緒に鮎つかみを体験してもらったり、出店などを楽しんでもらいました。

また農業体験イベントやふるさと納税で継続的に連携しているアグリアライアンスに当企画趣旨を案内し、そこで働く技能実習生も当ツアーに参加することとなりました。

自然体験型観光|落花生収穫体験

在住の外国人の方々にとって地域イベントを体験するだけでなく地域の方々等との交流も生まれる機会となりました。

おわりに

イベントのあるべき姿

主催者さんからご相談をいただき、今回、ディスカバー東広島では予約決済や当日の受付業務のDX化支援を行いました。

上記の通り多少なりとも負担軽減の支援はできましたが、予約者だけで1,200人を超え、全参加者となると数千人規模となる当イベントを高齢化が進む地域の自治組織等で運営していくことの厳しさを近くで活動させていただいて改めて痛感する機会にもなりました。

地域の方々が望むイベントの進むべき方向性を話し合う場を地域の方々で設けてもらい、その方向性に寄り添った支援をディスカバー東広島として実施していければと考えています。

外部システムのフル活用

今回、外部サイトを構築、運用したことでディスカバー東広島のような地域DMOではシステムを独自に開発・更新していくよりも外部システムを導入する方が費用対効果が高いことが伺えました。

よって外部サイト上でCRMや主催事業者ごとの管理画面アクセス権の付与などの機能が充実されたタイミングにてディスカバー東広島の公式WEBサイトの予約システムから完全移行していくことを検討していきます。

また今後は地域事業者さん等が実施するイベントの販売だけでなく、市が管理するアウトドア施設なども掲載するように市と調整を進めていくことで、施設を中心とした地域の消費額のアップにも取り組んでいきます。

市直営施設の予約決済DX化に関する記事はこちらから

今後も地域を代表するお祭りやイベント、公共施設の予約決済をDX化することで、主催者の負担を軽減するとともに顧客関係管理(CRM)を促進することで持続可能な観光地域づくりに取り組んでいきます。

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