〜目次〜
はじめに
観光コンテンツを造成する際、ただやりたい事や実施してみたい事をイベント化して販売しても市場ニーズにそぐわず、集客不足によって不催行となってしまう場合が少なからずあります。よってイベントを企画実施する際は、事前にアンケート調査を行い、分析結果に基づいたマーケットインによるコンテンツ開発を心がけています。
↓LINE公式アカウントを活用した観光ニーズ調査↓
一方で東広島は現状で決して観光地としての認知度が高いとは言えず、本業で観光業に取り組む事業者さんも多くないため、マーケットから求められているコンテンツを企画、造成できるかと言うと必ずしもそうではありません。
限られた資源を活用して企画されたコンテンツ(プロダクトアウト)の集客を実現するためにディスカバー東広島が用いているLINE公式アカウントによるセールスプロモーションの効率化の取組み事例をご案内します。
集客に結びつけるプロモーションの最適化
LINE公式アカウントには配信メッセージを開封したユーザーやクリックしたユーザー等をグルーピング(クリックオーディエンス化)して、次回以降の配信時にその絞り込みで配信できる便利な機能があります。
例えば農業体験コンテンツを地域農家さんと連携して造成し、LINEから訴求文章やイメージ画像と合わせて予約URLを1,000人の方々に配信したとします。
その際に200人の方が予約URLをクリックしたとして、この方々をディスカバーで「農業体験・自然体験」に興味関心が高い層としてグルーピングを行い、次回以降の「農業体験・自然体験」コンテンツが造成された際に、この200人の方々にピンポイントで配信を行います。
登録者にとっては興味関心のある情報のみがプッシュ通知で届くようになるため、アカウント登録しているメリット(満足度)が高くなり、ディスカバーとしても不特定多数の方(興味関心が低い層も含まれる)への配信を避けることで、ブロック率(配信停止)を下げる効果も得られます。
絞込みを行わず、通常配信を行った場合の平均クリック率は17.8%となりますが、このグルーピング機能を用いた場合はクリック率が約30%から中には50%以上の配信も現れます。
図のクリック率の右にはCVR(転換率)もあり、各イベントでおおよそ3%程度となるため、小規模なイベントはLINEからの配信のみで満枠に達しています。
また当LINE公式アカウントの登録者属性は約8割が東広島市民、7割以上が女性、4.5割以上が35~44歳の子育て世代となることから、プロダクトアウトで企画されたコンテンツをそれらの方々のニーズに合うように調整する作業を行い、CVRを高める取組みも行っています。
もちろん絞込みを行って配信したとしても全てのコンテンツが無事、最少催行人数に達するわけではありませんが、地域資源を活かして造成されたイベントに興味関心があるターゲット層をグルーピングによって獲得することで、催行率を高める効果が得られています。
ABテストによるプロモーションノウハウの蓄積
またこの属性を絞って配信する機能を活用することでABテストも実施することが可能となります。
5,000人以上の登録者がいるアカウントでは公式機能としてABテストが実施可能となります。ディスカバー東広島のアカウント登録者数は約1,200人(2022年12月現在)となるため、このABテスト機能を活用することはできませんが、クリック率等に影響しづらい絞込み選択によってABテストを実施しています。
実際に行っている絞込みは「友だち期間」になります。性別、年齢等での絞込みでは配信コンテンツによってクリック率等に影響を及ぼしてしまう可能性がありますが、友だち期間(登録してから「6日以下」や「7日~29日」など6カテゴリーで絞込み可)であれば影響は少ないと考えられます。
実際に行ったABテスト事例として、配信文章と予約URLは全く同じ内容ですが、送付する画像をAパターンでは「イベント風景が伝わる写真」、Bパターンでは「詳細情報が記載されたイベントチラシ」にて配信し、どちらのクリック率がより高いのか検証しました。
このことからLINEのチャットルームではチラシよりもイベント風景が伝わりやすく、体験内容がイメージできる写真等の相性が良いという事がわかりました(仮説)。
さらにこの謎解きイベントで得られた体験者アンケート調査から満足度が高く、初心者でも楽しめたという分析結果がえられたため、今度は風景写真と予約URLは同一にし、「満足度の高さ」と「初心者にも優しいこと」をそれぞれ訴求する文章にてABテストを実施し、どちらのクリック率が高いかを検証することも行いました。
するとビギナー訴求のクリック率が高いことが分かりました。(もちろんイベント内容によって訴求力のあるポイントは異なることが予想されます)
この様にしてセールスプロモーションに関するノウハウを団体として蓄積していき、また地域事業者さんにもデータに基づいたプロモーションやマーケティングの重要性を実際の結果も踏まえてフィードバックにて共有する取り組みも行っています。
おわりに
成功事例のみを記載させていただきましたがもちろん現状の課題もあります。それは予約が必須ではないイベントに関するプロモーションの効果測定になります。
例えばお祭りやマルシェなどに関する配信をLINEから行った際、クリック率で市場の反応を一定数は把握することができますが、イベント形態が自由参加型となるため、どれほどのプロモーション効果があったのかイベント主催者もディスカバー東広島も把握できず、適切なPDCAサイクルを回しづらく、持続的な連携にも結びつきづらいという課題があります。
来場者に対して流入経路に関するアンケート調査を実施することで効果測定を実施することも可能ではありますが、小さなイベント毎でアンケート調査を実施するのは主催団体には難しく、今後の工夫や改善が必要となります。
一方で消費(予約)に結び付き、事業者さん等の主催者にデータに基づいたプロモーション効果を認識してもらうことで事業者さんとの関係を構築し、既存コンテンツのブラッシュアップや新規のイベント企画へと繋がる事例も現れていいます。
DMOとして限られた予算の範囲中で、有料広告に慢性的に依存せず、オウンドメディアを成長させ今後もデジタルマーケティングによってセールスプロモーションを最適化し、ノウハウを蓄積、共有していきます。