事業報告

2026年 持続可能な観光に対する住民満足度調査 |アクション方針・進捗評価編

はじめに

2025年度に実施した住民満足度調査では、持続可能な観光地としての住民満足度37.7%を起点に、観光による「経済還元」の可視化、交通・インフラ負荷の軽減、観光客との「緩やかなつながり」の創出を重点アクションとして設定しました。あわせて、DMOアクションプラン期間となる令和10年度までに住民満足度45.0%、回答数1,000件を目指す中期目標を設定しています。

2026年度は、市公式LINEを活用して調査を実施し、市民533件を含む有効回答588件を得ました。本編では、2025年度に設定した目標値とアクション方針に対して、今年度の調査結果を基に進捗を評価し、今後「継続すること」「強化すること」「見直すこと」を整理します。

なお、今年度は調査手法や回答者構成が前年と異なるため、前年差のみをもって市民全体の意識変化と断定せず、複数の指標やクロス分析を組み合わせて評価します。

参考:2026年 持続可能な観光に対する住民満足度調査 |集計・分析編

2026年 持続可能な観光に対する住民満足度調査 |集計・分析編

昨年度設定した目標値に対する進捗

住民満足度は43.2%となり、2026年度目標40.1%を3.1ポイント上回りました。数値上は2027年度目標42.6%も0.6ポイント上回っています。一方、回答数は588件で、2026年度目標600件に対する達成率は98.0%でした。

指標 2025年度
実績
2026年度
目標
2026年度
実績
2027年度
目標
2028年度
目標
住民満足度 37.7% 40.1% 43.2% 42.6% 45.0%
回答数 398件 600件 588件 800件 1,000件

【評価】住民満足度は中期目標に対して順調に進捗しています。ただし、今年度の不満率は28.1%で前年27.9%とほぼ横ばいであり、「不満層が減少した結果」とは言えません。中立層が減少し、満足側の回答が増えたことが主な変化です。

このため、現時点では既存の中期目標を上方修正せず、2027年度42.6%、2028年度45.0%の目標を維持しながら、不満層の縮小と施策効果の継続確認を重視します。

回答数に関する補足

回答数は588件となり、目標600件に対して98.0%と、目標に近い回答数を確保しました。今年度は、酒まつり等の記憶が比較的新しい時期に回答を得られるよう、10月19日~25日に調査を実施しました。

一方、回答期間中の10月21日にはPHPの重大な脆弱性が公表され、同時期には国内で不正アクセスや個人情報漏えいに関する注意喚起・報道も相次いでいました。これらが本調査の回答数に影響したかを検証することはできませんが、個人情報やWebサービスの安全性への関心が高まる外部環境の中での回答依頼となりました。

また、昨年度のGoogleフォームでは、観光教育講座を実施した市内小学校の保護者にも回答を依頼しましたが、今年度は市公式LINEのCRM上でアンケートを構築したため、昨年度と同様のLINE外への回答依頼は行っていません。

その一方で、ディスカバー東広島では、市公式LINEを活用したデジタルスタンプラリー等を継続的に実施し、市内外の利用者との接点拡大とCRM基盤の構築を進めています。2026年夏クールのデジタルスタンプラリーでは、参加者320人のうち257人(80.3%)が同年2月の企画開始以降の新規参加者となるなど、新たな利用者との接点が継続的に生まれています。こうした取組を通じ、市公式LINEの観光・おでかけメニューを利用する市内外のユーザー基盤も継続的に拡大しており、今回のアンケート回答を支える一つの基盤になったと考えられます。なお、デジタルスタンプラリーの推進と今回の回答数との直接的な因果関係を示すものではありません。

昨年度とは調査手法や周知導線が異なり、LINE外への回答依頼も行わなかった中で目標に近い回答数を確保できたことは、今後、市公式LINEを活用して住民・来訪者等の意識を継続的に把握し、回答内容に応じた情報提供や施策実施、その後の変化を検証していくCRM型の定点調査に向けた基盤が形成されつつあることを示す結果と捉えています。

【関連報告】
公式LINEを活用したデジタルスタンプラリー|2026年夏クール実施報告 ~ゲートウェイからの周遊検証とCRM活用の深化~

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2025年度アクション方針の進捗評価

2025年度の重点方針 2026年度の結果 評価 今後の方向性
観光による「経済還元」の可視化と浸透 「地元経済への還元が感じられない」は64.0%→58.0%(-6.0pt)。改善方向だが、今年度も不満要因第1位。 継続・強化 観光消費額や地域内での消費、地域事業者・文化継承等への波及を、住民に分かりやすく継続発信する。
交通・インフラ負荷の軽減と情報提供 「交通混雑・駐車場不足」は44.1%→54.7%(+10.6pt)で上昇。 優先度引上げ 市担当課・関係機関と共有し、イベント時や観光集中時の交通・駐車場対策、公共交通・アクセス情報の提供等を重点的に検討する。
観光客との「緩やかなつながり」創出 観光客との接点が少ない層は75.4%。一方、「接点少×参加意向高」は266人(市民の49.9%)。 方向修正・強化 接点そのものを増やすだけでなく、市民が無理なく観光地域づくりに関われる具体的な参加機会を提示する。

【効果検証上の留意点】2025年度調査結果を受け、ディスカバー東広島では以下のアクションを実施してきました。ただし、各取組と今年度の調査結果の変化との間に対照群等を設けた検証は行っておらず、調査手法・回答者構成・社会環境等も異なります。そのため、今年度の数値変化をこれらの取組の直接的な効果とは断定せず、「実施後のモニタリング」として評価します。

DMOアクションプランと観光推進会議の連結

2025年度調査で把握した「地域への経済還元」「交通混雑・駐車場不足」等の論点を、DMO内の調査結果にとどめず、DMOアクションプランと関係者協議へ連結する取組を進めました。

2026年8月28日に開催した東広島市観光推進会議では、DMOアクションプランの進捗共有に加え、回遊・消費・交通負荷を一体的に議題とし、観光協会、商工団体、交通・宿泊事業者、行政等と協議しました。これにより、「調査→関係者協議→アクション」へつなげる運用体制を整えています。

令和8年度 東広島市観光推進会議の開催

観光による「経済還元」の可視化は継続

「地元経済への還元が感じられない」は前年64.0%から58.0%へ低下しました。改善方向ではあるものの、不満層150人のうち87人が選択しており、引き続き最大の不満要因です。

今後も、観光消費額や観光による地域内経済への効果を把握・発信するとともに、観光が地域事業者、農産品・特産品、文化・伝統の継承等にどのようにつながっているかを、住民が具体的にイメージできる形で可視化する必要があります。

【実施した取組】地域メディアと連携し、観光の経済効果を市民に伝える取組を実施しました。地域メディアへの情報提供を通じ、東広島市内のホテル建設ラッシュを題材として、ビジネス・学術・観光による宿泊需要や、飲食・小売・観光・交通等への波及、雇用創出等を解説する記事化につなげました。

関連記事:https://www.higashihiroshima-digital.com/260827-news-hotel-controversy/

  • 観光消費額・観光客数等のモニタリング結果を継続的に公開する。
  • 観光消費が地域事業者や地域産品に還元された具体事例を公式WEBサイト等で発信する。
  • 経済効果だけでなく、文化・伝統の継承や地域活動への波及も「観光による地域還元」として伝える。

交通・駐車場は重点課題として優先度を引き上げ

「交通混雑・駐車場不足」は54.7%となり、前年44.1%から10.6ポイント上昇しました。観光による生活環境への負荷として、今年度は特に注意すべき結果です。

DMO単体で解決できる課題ではないため、観光推進会議、関係事業者等と共有し、観光客・イベント来訪者が集中する時期や場所を確認しながら、具体的な対策を検討します。

【実施した取組】市内で渋滞や駐車場不足が生じやすい花火大会等の大型イベントにおいて、実行委員会等とパークアンドライドの実証を検討しました。一方、安全管理面の課題から実施は保留となり、今年度の実施には至りませんでした。その後も、交通混雑・駐車場不足を東広島市観光推進会議の議題として取り上げ、関係者間で協議を進めています。

  • イベント時の混雑・駐車場課題について、関係者間でデータと課題認識を共有する。
  • 公共交通、臨時駐車場、アクセス・駐車場情報等の案内改善を検討する。
  • 翌年度調査でも同一設問を継続し、対策後の変化を確認する。

「緩やかなつながり」から「参加機会への接続」へ

観光客との接点が少ない市民は75.4%と、前年から大きな構造変化はみられません。一方で、観光客との接点が少ないにもかかわらず観光地域づくりへの参加意向が高い市民は266人で、市民全体の49.9%を占めました。

この結果から、観光客との接触機会そのものを増やすことに加え、「何なら参加できるのか」「どのように関われるのか」を具体的に示すことが重要と考えられます。

【実施した取組】市公式LINEの観光メニューを基盤としたデジタルスタンプラリーを継続し、市民・来訪者とのデジタル上の接点を蓄積してきました。参加後の周遊データ等を把握し、CRMを通じて関心に応じた情報発信の最適化を進めています。今年度は、このCRM基盤を住民満足度調査にも活用し、回答内容に応じた継続的な情報提供と行動変化の検証へ接続しています。

  • 市公式LINEを活用し、イベント、ボランティア、地域の魅力発信、意見募集等の参加機会を案内する。
  • 配信後に参加・閲覧・来訪等の行動が生じたかを確認し、意向から行動への転換を検証する。

「働いてよし」の把握に向けた回答基盤づくり

今年度は、市外在住・市内就業者から「働いてよし」に関する評価を取得する設問を新設しましたが、該当回答は2件となり、定量的な分析に必要な回答数を確保できませんでした。

この結果を踏まえ、次回以降は、市外在住者や市内立地企業の従業員等への市公式LINE登録を促進し、市内で働く層の回答母数を計画的に確保する方針とします。まずは「働いてよし」の基準値を把握できるサンプルの確保を優先します。

2026年度調査から新たに見えた重点アクション

「不満がある=地域を評価していない」ではない

今年度新設した「東広島市で暮らしていることへの誇り」の肯定率は77.3%でした。さらに、住民満足度が低い150人のうち94人(62.7%)は、地域への誇りを肯定しています。市民全体では「満足度低×誇り高」の層が94人(17.6%)存在しました。

この層では、「地元経済への還元」と「交通・駐車場」がそれぞれ52件、「文化・伝統」が38件と多く挙げられています。地域そのものへの評価を高めるだけではなく、観光によって生じている具体的な課題を改善し、その取組を伝えることが重要です。

キーポイント:地域への「誇り」を持つ市民にも観光への不満は存在する。今後は、誇りの醸成だけでなく、経済還元・交通・文化保全等の具体的な改善を進める。

市民の「参加したい」を具体的な行動へつなげる

観光地域づくりへの参加意向は71.1%となりました。一方、「誇りは高いが参加意向が高くない」層も102人(19.1%)存在します。積極的に参加を拒否する層は少ないことから、参加方法が見えない、負担感がある等の可能性があります。

市公式LINE上で回答内容に応じたセグメントを設定できる今回の調査環境を活かし、参加意向のある層に対して具体的な機会を届け、その後の意識・行動変化を確認することを今後のCRM施策の一つとします。

市民が挙げた地域資源を情報発信へ反映

「好き・人におすすめしたい場所・スポット」は、市民533人中529人から具体的な回答が得られました。西条酒蔵通り・酒蔵関連のほか、道の駅、公園、古墳、大学、自然景観等、観光施設に限らない多様な地域資源が挙げられています。

市民が日常の中で価値を感じている場所を公式WEBサイトやSNS等で紹介し、市民目線の地域資源を来訪者にも伝えることで、地域資源の再発見と地域への誇りにつなげる取組を検討します。

市公式LINEを活用した「調査→施策→検証」の継続

今年度は、昨年度のGoogleフォームから市公式LINE上でのアンケートへ変更しました。これにより、単発の調査として結果を集計するだけでなく、回答内容に応じて関心・課題別のセグメントを設定し、関連情報や参加機会を継続的に届けることが可能となります。

市外在住・市外勤務者のうちLINE詳細設問に回答した48人では、95.8%が「詳細を調べる」「公式WEBサイトを見る」「家族・友人に共有する」「実際に訪れる」等の何らかの行動を行っており、43.8%は店舗・スポットへの来訪またはイベント参加につながっていました。対象数が少ないため一般化はできませんが、LINEを行動につなげるチャネルとして活用できる可能性が確認されました。

今後は、以下の流れで継続検証を行います。

① アンケート回答から関心・課題を把握

② 回答内容に応じてセグメント化

③ 関連情報・参加機会を継続的に配信

④ 閲覧・参加・来訪等の行動を確認

⑤ 次年度調査で意識・行動の変化を検証

次年度に確認する指標

中期目標は昨年度設定値を維持します。そのうえで、住民満足度だけでなく、今年度新たに把握した「誇り」や参加意向、LINEを通じた行動等を補助指標として継続確認し、アクションの効果を検証します。

確認指標 2026年度 2027年度の扱い
住民満足度 43.2% 既存目標42.6%との進捗を確認。目標値は変更しない。
回答数 588件 既存目標800件に向け、LINE登録者数、周知方法を改善。
地域への誇り 77.3% 今年度を基準値として経年変化を確認。現時点では新たな数値目標を設定しない。
観光地域づくりへの参加意向 71.1% 参加意向だけでなく、実際の参加・行動への転換を確認。
主な不満要因 経済還元58.0%/交通・駐車場54.7% 重点アクション実施後の選択率変化を確認。
LINEによる行動 参考値として把握 セグメント別の情報提供後に、参加・閲覧・来訪等の変化を検証。

おわりに

2026年度の住民満足度は43.2%となり、昨年度設定した2026年度目標40.1%を上回りました。一方で、不満層は約3割で前年から大きく減少しておらず、交通・駐車場への不満は上昇しています。

また、「地域への誇りは高いが観光には不満がある」「観光客との接点は少ないが観光地域づくりには参加したい」といった層が一定規模存在することが分かりました。今後は、こうした住民の声を一律に捉えるのではなく、意識や課題に応じた施策や情報提供につなげることが重要です。

昨年度調査後には、経済還元の可視化、交通負荷への対応検討、LINE・CRM基盤の整備、観光推進会議とDMOアクションプランの連結等、調査結果を踏まえた取組を実施してきました。今年度の数値の変化とそれらの取組との直接的な因果関係は確認できませんが、今後も同一指標の定点観測と具体的な施策実施を組み合わせ、変化を検証していきます。

ディスカバー東広島では、調査結果を公表して終えるのではなく、市・観光協会・関係事業者等と共有し、具体的なアクションへ反映するとともに、市公式LINEを活用して施策後の意識・行動変化を継続的に検証していきます。

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