〜目次〜
テストマーケティングを経て
東広島には7つの島があり、唯一の有人島である大芝島でコテージを経営している株式会社Y51が宿泊者向けにSUP体験を提供されています。
コロナ禍となりマイクロツーリズムの需要が拡大したことから、宿泊者だけでなく近隣からの旅行客にも体験を提供できるように受入環境整備を2020年から徐々に整え、ディスカバー東広島と連携してテストマーケティングを実施しました。
観光客向けにアクティビティを提供するにあたり、滞在時間伸長による観光消費額UPを目指すため、SUPだけでなくランチ付きプランや島内をサイクリングできるように、クロスバイクのレンタルも行い満足度調査等を実施しました。
アンケート調査からSUP体験だけでなくその他のコンテンツの満足度も高いことが伺えるものの、差別化や付加価値、リピーター獲得等の課題も明らかになりました。
2021年ディスカバーはプロモーション支援のみにとどまり、テストマーケティングの経験を活かし、事業者さん自らでSUPヨガプランの新規造成や体験を午前と午後の2回実施することで参加枠数を増やすなどコンテンツ内容をブラッシュアップし、自走化されました。
さらに受入環境整備としてSUPの拠点施設となっている古民家のトイレや更衣室等の設備もリノベーションが行われました。
プロモーションではローカルメディア紙面やタウン誌への掲載、パブリシティとしてテレビ番組にて放送されました。また口コミ効果を促進するため体験者の方々に友だち割引クーポンを配布し、新規顧客やリピーターの獲得も図っていきました。
おかげさまで2021年は400名以上の方々に体験いただき、そこから得られたアンケート回答を分析し、来シーズンに向けての満足度のさらなる向上とプロモーション手法の最適化を検討していきました。
2021年アンケート集計結果
・実施期間 :5~11月
・全予約者人数:493人
・全参加者人数:406人
・アンケート回答数:100件
参加者出発地
・広島市:41件
・東広島市:40件 (内訳 西条18件、高屋6件、八本松3件、安芸津9件、黒瀬4件)
・呉:9件
※広島県内からの参加者が97件となる。
参加者属性
・40代が最も多く35件、続いて30代が29件、20代が17件となる。
・女性が73%、男性27%となる。
※性別に関して家族やグループでの参加が多く、アンケート回答者によって数値の誤差が予想される。
流入経路
全体
・口コミ(友人・知人・家族):41件
・ローカルメディア紙面:14件
・ディスカバーオウンメドディア:9件(公式サイト5件、Instagram4件)
エリア別(クロス集計)
①広島市
・5,6月は6件中、口コミ流入は1件のみなのに対し、7月以降は35件中、21件(60%)が口コミとなった。
・最も口コミによる流入が多い月は8月となり、続いて7月、9月となる。
・TjHiroshimaWEB広告(Instagram)からの流入は3件となる。
②東広島
・プレスネット紙面での流入が最も多く、7月がシーズン中のプレスネット流入14件中、6件(42.8%)となる。
・ベストシーズン以外(5,6,10月下旬)の時期の参加者割合が高い傾向となる。
・口コミによる流入はシーズン中、一定数となる。
リピート数
・東広島市:8件(66%) (内訳:高屋3件、安芸津3件、八本松1件、西条1件)
・広島市:2件(16%)
満足度
・イベント料金:3.93
・予約方法:4.0
・アクセス:3.75
・スタッフの対応:4.39
・SUPレクチャー:4.36
・全体スケジュール:4.3
・お弁当(利用者のみ):4.14
・サイクリング(利用者のみ):4.08
・総評:4.36
※スタッフの対応やレクチャーに高い評価が付き、総評にも反映されていると考えられる(仮説)
※「良かった点」という自由記述の設問にリピーター5件(41.6%)が「スタッフ、インストラクターの対応」と回答している。
※料金とアクセスは4ポイントを下回る結果となる。
参加に至るまでの懸念事項(複数回答可)
・「参加費」(9件)
・「立地」(16件)
・「持ち物」(14件)
・「水温・気温」(33件)
5月:6件(当月全予約12件中、50%)
6月:5件(当月全予約13件中、38%)
7月:8件(当月全予約23件中、34%)
8月:8件(当月全予約28件中、28%)
9月:4件(当月全予約20件中、20%)
10月:2件(当月全予約4件中、50%)
※5,6,10月で参加者の35%以上が「水温・気温」を懸念事項としている。
その他
海、又はビーチへの訪問回数(年間)
・0回:21件
・1~3回:56件
・4~10回:13件
・11回以上:8件
ご家族や友達・知人への推奨度
アンケート全回答者が「勧めたい」を選択
キャンセル理由(全83人)
・天候不良:66人(79.5%)
・コロナ関係:8人(9.6%)
・不明:9人(10.8%)
※シーズン中に緊急事態宣言や集中対策、まん延防止等の期間もあったが、「3密回避」「予約制」等の対策により、コロナ関係のキャンセルは8人のみとなった。
口コミ促進とリピーター獲得キャンペーン(半額招待券の配布)
・利用者数:37人
・チケット利用者の同伴参加者数:12人
SUP体験前後の周遊観光
11件(直売所2件、その他)
分析と今後のアクション
来季プロモーション
5~6月と10月下旬は気温や水温の要因で予約件数が伸びにくいため、今年度参加者へのDMによる誘客又は、収支バランスを見て開催期間の短縮(ベストシーズンのみ等)を事業者さんが判断していくこととなりました。
シーズンイン時、事業者さんやディスカバーオウンドメディアにてプロモーションを実施し、7月上旬にはローカルメディア紙面への掲載やInstagram広告等を広島市と呉市の20~40代女性に対して実施することで直接の参加者だけでなく8,9月の口コミへと波及させ予約を獲得していくことも検討しています。
懸念の解消とリピーター獲得
現在も行っているアクセス方法や持ち物の事前案内を継続して実施し、且つ新規顧客の獲得のため、招待券の継続や新たなプラン造成による価格帯の多様化を計画していくことになりました。
また事業者さんが引き続き顧客リストを作成することで、現在高評価を受けている「スタッフの対応」に対する満足度の高水準を維持し、リピート率(特に東広島市民)を上昇させていきます。
周遊観光と移動を伴う賑わい創出
40%が東広島市内からの参加となりましたが山間部エリアからの参加者は0件となったため、山間部エリアの方々が安芸津を訪問する機会を創出するモニターツアーを観光協会や商工会と連携して企画検討していくことになりました。
実際に造成されアンケート調査を実施したツアーの様子はコチラ↓↓
おわりに
初めてシーズンを通してアクティビティを提供し、400名以上の参加者によって収益も確保することができ、事業者さんによるシーズンコンテンツの自走が実現されました。
Y51は東広島で観光業を本業として取り組まれている数少ない事業者さんとなります。今後もY51のような事業者さんとの連携を他のエリアでも実施していくことで、ディスカバー東広島の中期目標でもある「東広島市のどのエリアにおいても、年間を通じて何かしら(定期、季節性、単発)の観光コンテンツが提供できている」ように進めていきます。
追記
古民家リノベーション
SUPの拠点となっている古民家のリノベーションを行う企画を地域の学校と連携して実施しましたがコロナ禍や悪天候等の理由から継続開催することができず、完成まで至りませんでした。地域の人手不足や学生の持続的な地域との関わりに係るスキーム構築など、コロナ対策だけでなく、今後も取り組んでいく際にはクリアしなければならない課題を痛感させられた企画となりました。(2021年)
事業者間の連携
東広島市内にある牧場で作られたアイス付きのSUP体験プランを事業者さんが新たに造成し、好評となりました。集客できるコンテンツが自走化されたことで、そこに集う方々への僅かではあるかもしれませんが物販による地域経済への好影響が現れる事業者間の連携となりました。 (2022年)