事業報告

2025年 持続可能な観光に対する住民満足度調査|アクション方針・目標値設定編

はじめに

観光庁が定める地域DMO必須KPIJSTS-D(日本版持続可能な観光指標)に基づき、持続可能な観光地づくりを推進するため、住民の皆さまを対象としたアンケート調査を実施しました。

本調査結果を基に、住民の皆さまの満足度の現状を把握するとともに、今後の一般社団法人ディスカバー東広島 観光アクションプラン(以下、DMOアクションプラン)における重点的に取り組むべきアクションを明確化し、また満足度の目標値の設定を行いました。

調査結果要旨

本調査は、持続可能な観光地としての住民満足度、観光客受入機運、および地域活動への参加・関与意欲を把握し、満足度を低下させる要因等を属性別に分析することを目的として実施しました。

詳しい集計・分析結果は以下のリンクからご確認いただけます。

2025年 持続可能な観光に対する住民満足度調査|集計・分析編

満足度と世代間の傾向

「満足・大変満足」と回答した住民は37.7%と約4割となり、「どちらでもない」が34.4%と大きな層を占めました。

40代が最も満足度が高く、50代が最も不満度が低い層となりました。一方で70代以上は「満足・大変満足」が25.0%と低く、「不満・大変不満」が36.4%と全年代で最も高い不満度を示しました。

不満の主な要因

不満の最大の要因は、「地元経済への還元不足」と「交通インフラへの負荷」の2点となり、「文化・伝統」の不満は高齢層で顕著となり、70代以上が56.2%で突出して高く、60代(41.2%)が続きました。

観光客との関わりと受容度

観光客受け入れ意向は、「とても良いと思う・どちらかといえば良いと思う」が95.5%と非常に高く、観光客を排除したいといった意識はほとんど見られず、住民の受容度はポジティブであることが確認されました。

「まちのイベントやお店などで、時々ふれあうことがある」層の満足度が最も高い(満足・大変満足で約47%)一方で、観光客と「ほとんど関わりはない」層は満足度が最も低く(25.2%)、不満度が最も高い(32.2%)という結果となりました。

調査実施におけるワンポイント

内製による実施

本調査は、昨年度からの市LINE公式アカウント連携に関する取り組みにより、調査への活用を目的に環境を整備していたため、外部委託することなく内製で予算をかけずに実施することができました。

 \LINE活用に関する取り組み記事はこちら/

東広島市LINE公式アカウント連携

設問設計の工夫

観光庁が定める地域DMO必須KPIJSTS-Dが推奨する設問を基に設問の設計を行いました。また分析結果からより具体なアクションに結び付けられる様に居住地や年代だけでなく、観光客との関わり度合などの属性も収集するようにしました。

  • 持続可能な観光地としての満足度(単一選択式)※DMO必須KPI
  • 不満要因の抽出(選択式・複数選択可)
  • 観光客受容(単一選択式)※JSTS-D推奨
  • 観光活動への参画意欲(単一選択式)
  • 属性情報(居住地、年代、職業、勤務地、観光客との関わり)

回答率向上のための取り組み

以前ディスカバー東広島で運用していたアカウント(LINE公式アカウント連携前)の「おでかけ観光情報」に関する平均クリック率は20%前後と高かった実績がある一方で、20222023年にアンケート調査を実施した際の回答率は10%程度に留まっていました。

\過去のアンケート調査記事はこちらから/

LINE公式アカウントを活用した観光ニーズ調査2022

LINE公式アカウントにおいて「おでかけ観光情報」の配信を希望する登録者は約2,000(202510月現在)であることから、最大限の回答率が得られたとしても、回答数は200件程度となる見込みでした。

回答数への負担を最小限に抑え、回答の離脱を防ぐため設問数を10問以内に収め、また回答促進を目的に、東広島特産品セットを抽選でプレゼントする旨、調査協力とあわせて配信しました。

さらに観光教育の一環としてディスカバー東広島が講座を行った小学校の保護者の方々へのチラシ配布、ローカルメディアとの連携など、複数の手法を組み合わせて回答率向上を図り、約400件と想定の2倍の回答数を得ることができました。

おわりに

今回の調査結果を踏まえ、「来る人・住む人がつながりにぎわう東広島」というビジョン実現に向け、具体的なアクション方針と目標値を設定します。

DMOアクションプランの推進

コロナ禍など社会的情勢の影響を受けやすい観光産業において、観光消費額を安定的に向上させるため、DMOアクションプランに記載する通り、観光地経営を推進していきます。

観光関連事業者の方々だけでなく、農業や工業といった非観光産業事業者の方々とも連携し、地域資源を活かした体験コンテンツの造成や、特産品の消費促進を図ります。

そして観光が地域経済に与える効果の大きさを定量的に把握するため、波及効果を定期的に測定、評価していきます。

観光による「経済還元」の可視化と浸透

不満の最大の要因である「地元経済への還元不足」を解消するため、観光客の消費が地域に還流していることを、地域住民の方々が実感できる仕組みを構築します。

具体的には、観光消費額や経済波及効果に関する数値、文化・伝統の継承に関する活動を報告書等にまとめ、ローカルメディアや行政、公式LINEなどの情報チャネルを通じて地域住民へ定期的に発信することで、観光のポジティブな側面の理解促進を図っていきます。

交通・インフラ負荷の軽減と情報提供

不満要因第2位の「交通混雑・駐車場不足」に関しては、DMO単体での対策が困難な領域となります。

そのため、今回の住民満足度調査の結果を東広島市担当課と共有することで、市民生活への影響を最小限に抑えるための情報共有・連携を強化し、共同で対策の方向性を検討していきます。

観光客との「緩やかなつながり」創出による共感醸成

「ほとんど関わりがない」層の不満度が高い一方で、「時々ふれあうことがある」層の満足度が最も高いという結果は、地域住民の方々が無理なく観光に接し、ポジティブな側面を実感できる機会の創出が重要であることを示しています。

DMOアクションプランで定めるターゲット層であり、地域住民も含む「発地:広島県内」の方々を対象にしたコンテンツの企画・実施支援を継続して行うことで、地域の方々と観光客がつながりにぎわう機会を創出していきます。

また市LINE公式アカウントでは、配信希望情報を興味関心カテゴリー(グルメ、地域イベント、スポーツ等)から選択することができる設定にしており、定期的に各カテゴリー選択者数を集計し、配信情報の最適化を行っています。

地域イベントやマルシェなどニーズが高く、観光客との緩やかな繋がりを創出するイベント情報を配信するとともに、特に満足度が低かった高齢層の方々への取り組みとして、文化・伝統に関するイベントやツアーについても積極的に配信することで地域住民の方々の観光への共感を醸成していきます。

目標数値の設定

上記の具体的なアクションを推進することで以下の目標数値の通り、現状の満足度37.7%から年に2.43ポイント毎増加させ、東広島市観光総合戦略・DMOアクションプランの期間となるR10年までに満足度45%の達成を目指していきます。

また、より信頼性の高いクロス分析を行うため、目標回答数を1,000件に設定し、回答者の増加にも取り組んでいきます。

R7年度 ※実数 R8年度 R9年度 R10年度
住民満足度 37.7 40.1 42.6 45.0
回答数 398 600 800 1,000

 

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