〜目次〜
はじめに
2024年10月に韓国ソウルで行われたトラベルショー2024に広島臨空広域都市圏振興協議会と広島空港振興協議会が連携出展し、ディスカバー東広島も現地にて広島県の観光情報の案内を行いました。
DMO参画目的
DMOとして今回の事業に参画するにあたり、以下の目的を設定しました。
- 広島空港周辺市町と連携した臨空エリア認知度の形成
- アンケート調査によるデータ収集と今後のアクション検討(ターゲット見極め)
旅博概要とワンポイント
韓国ソウル トラベルショー2024シーズン2 概要
日程 | 2024年10月4(金)~10月6日(日)/3日間 10~18時 (最終日のみ17時終了) |
会場 | COEX Hall C |
来場者人数 | 約4万人 |
主な出展者 | テーマパーク、レジャー施設、観光スポット、政府観光局、旅行会社、ショッピングなど |
初日は金曜日平日であったこともあり8割程度の入込となり30〜50代のご夫婦または個人の方々が多く、週末は若者の割合も増え、イベント最終日14時ごろが3日間で来場者ピークとなりました。
そもそも広島臨空広域都市圏振興協議会とは?
三原市、竹原市、尾道市、東広島市、大崎上島町、世羅町により構成されており、活動内容は以下となっています(出典:東広島市公式HP)。
広島臨空広域都市圏とは、広島空港をとりまく4市2町で圏域を構成しています。広島臨空広域都市圏振興協議会では、圏域内の地域振興や圏域外への情報発信、また、広島臨空広域都市圏の活性化を目的とし、観光振興事業やイベント事業などに相互密接に連携して取り組んでいます。
ワンポイントと学び
出展ブースデザイン
背景パネルはインパクトがあるデザインとなり、ブース内に入られた方々へ各市町コンテンツの位置関係やゴルフ場、フライト情報の案内にも活用することができました。 ブース内に設置しているテーブルには何を訴求しているのかがわかるテーブルクロスを敷くことで、 直観的に来場者の方々へアピールすることができました。
配布物
上記したブースのデザインやレイアウトから多くの方々にブースに立ち寄っていただくことができ、初日は積極的に観光パンフレットを手配りしていましたが、在庫も考慮して興味関心を持たれ足を停められた方々に観光スポットの案内を行い、自ら取ってもらうスタイルに変更しました。
英語Verのパンフレットはやはり残りましたが韓国語Verは期間中にほぼすべて配布することができました。(東広島単体ではチラシや冊子など計950部を期間中に配布)
ブースイベントの実施
多くの方々にブースへ関心を持っていただき観光情報を届けるため、試飲会とクイズ大会を各日実施しました。
試飲会
竹原市、三原市、東広島市産の日本酒と世羅町産のワインの無料試飲会を実施しました。
当会議体で韓国トラベルショーへの出展が初となり、韓国での日本酒等のニーズも確かではなかったため、今回は空輸等での輸送は行わず、機内荷物の持ち込み制限から計10本(日本酒9本、ワイン1本)を現地に持参しました。
提供可能な量に限りがあったため試飲時間を予め定め、3日間で7回(計8時間程度)の試飲会を実施しました。また各市町から多様な銘柄を持参することができたため、味わいチャートを作成し、試飲された方々に各銘柄の味の違いや酒蔵見学ツアー情報も案内しました。
韓国ではスーパーマーケット等で販売されているパックの日本酒が一般的となり、今回持参した銘柄との味わいの違いに対して高評価のコメントを多くいただきました。
日本酒の認知度や訴求力としては、瓶や箱をテーブルに陳列して試飲が可能な旨、ブース前を通られる方々に声掛けを行いましたが実際に試される方は1割程度となりました。試飲される方々に対しては各銘柄や酒蔵の特徴を案内することができました。
試行的にお酒を注いだコップをお盆に乗せてブース前の通路で声掛けする方法に変更したところ、試される割合が高くなる反面、十分に情報を案内することができず、日頃から日本酒を飲まれない方も手にとるため、飲んだ後に苦手そうな表情をされる方も少なからずいました。
日本酒をフックにした来訪機運醸成や日本酒の認知度形成など目的にあわせて、イベント内容や提供方法を工夫する必要があることが伺えました。
試飲時間に関しては、数量を考慮して午前1回、午後2回実施しましたが、やはり午前からお酒を試す方は少ないため、今後時間を設けて試飲会を行う場合は午後に集中して行うことが望ましいと考えられます。
また注ぐ量はブース通訳の方のアドバイスから1杯あたりの量を少なくしたこともあり、予定を上回り約1,000杯以上を提供することができました。
クイズ大会
6市町の特色や広島空港に関するクイズ大会を行い、ブースのにぎわいづくりと観光スポット情報の認知を図る取り組みを行いました。
全7回実施し、正解者へは各市のノベルティ詰合せを景品とすることで多くの方々に参加いただき、費用対効果が高いイベントとなりました。
商品販売
旅博等のイベントは多くの方々に情報を届けられる一方で、実際にどのくらいの方々が観光地へ来訪されたのか効果検証を行うことが難しいという課題もあり、KPIをアンケート回答数やパンフレット配布数等に設定する傾向があります。
韓国からの訪日旅行者のニーズと広島臨空広域都市圏の観光コンテンツに鑑みて、ゴルフツアーを造成し、ブースにて販売する試みを行いました。
残念ながら3日間で申し込みにまで至ったケースはありませんでした。商品自体のブラッシュアップを継続して実施していく必要がありますが、旅博限定キャンペーン価格等を設定せずに訪日ファネルの比較検討等を経ずに旅博期間中のみで予約購入にまでを進めることは難しいことが伺えました。
他ブースの参考事例
今回のトラベルショーには世界の国や地域、お土産店などが多くの団体が出展していました。今後、広島臨空広域都市圏振興協議会がブース出展する際の参考として、広島ブースでの案内時間の合間に他ブースの見学も行いました。
背景パネルの代わりにインパクトのある写真を印刷した布を用いて、繰り返し利用することができ経済的且つ環境にも優しい(沖縄コンベンションビューロー)
アンケートからも訴求効果の高いことが伺える「食」コンテンツの訴求(徳島県)
アンケート調査と収集
ブースでは広島空港のトートバッグを中心にノベルティで訴求し、アンケート調査依頼を来場者の方々に行いました。
アンケート回答をする方々がブース前に一定時間滞留するため、賑わいの演出にも繋がり立ち寄りやアンケート回答の好循環がうまれました。
集計結果
n=1,146
※〈〉内は「観光庁 訪日外国人の消費動向2023年」出典データ
※アンケート回答者世代(トラベルショー来訪世代割合と大きな差はないと考えられる)
20~29歳:19.9%
30~39歳:29.1%
40~49歳:27.8%
50~59歳:14%
- 89.9%は訪日歴があり、10回以上のリピーターは全体の19.3%〈16.7%〉を占める。
- 訪日旅行計画予算は100~200万ウォンが59.8%、200~300万ウォンが29.2%〈訪日韓国人1人当たり旅行支出額106,312円〉
- 滞在日数は3~4泊が43.3%、2~3泊が38.6%とボリュームゾーン〈平均泊数4.7泊〉
- 宿泊施設(複数回答可)ではビジネスホテルが58.1%と最も高く(次点は「旅館」の43.6%)、宿泊費に予算をかけず、飲食や買物で消費する傾向を伺うことができる〈韓国支出割合:宿泊費32.8%、飲食費27.7%、買物代25.0%〉
- 旅先選定基準(複数回答可)からも「食」が67.5%と最も高く、消費額割合との相関関係が伺える。〈都道府県別訪問率は、1位大阪37.2%、2位福岡27.2%〉続いて「観光」55.7%、「癒し(温泉等)」44.7%。
- 周辺6町で食べたいものはラーメンが54.8%と最も高い一方で、牡蠣は9.1%と最下位(2020年牡蠣生産量:韓国32万t、日本16万t)。
- 旅行情報入手方法(複数回答可)はYouTubeが49%と最も高く、続いてInstagram37.9%、ブログ31.5%となる〈ブログ48.7%、SNS43.5、動画サイト42.8%〉
- 20~29歳(n=227)の旅行情報入手方法(複数回答可)はYouTube53.7%、インスタ49.3%、ブログ34.4%、旅行博は14.9%。
- 実際の訪日来訪世代割合では、20~29歳がボリュームゾーンとなり、若年層をターゲットとする場合はインフルエンサーやSNSが有効と考えられる。
- 主な移動手段(複数選択可)は電車/新幹線67.4%、バス51.9%と公共交通機関を利用する傾向あり(レンタカー19.7%、タクシー15.7%)
- 訪問先認知度では、原爆ドームが32.7%と最も高いが千光寺21.5%とうさぎ島20.2%は厳島神社15.8%よりも高い結果となった。
- 体験したいアクティビティでは、酒蔵巡り36.4%、祭り34.4%、歴史散策33.5%、紅葉31.5%となった。
- 「酒蔵巡り」を選択した方の年齢層は30代が31.9%、40代が30.7%。
- お土産需要はお菓子が58.8%となる(「酒」33.9%は韓国市場で人気の高いウイスキーのニュアンスを含む可能性あり)
- 広島⇔仁川ダブルデイリー直行便の認知度は36.5%
- 訪れたいと場所として「酒蔵(東広島)」を選択したのは274件(23.9%)、食べてみたい物で「美酒鍋」を選択したのは363件(31.7%)、体験で「酒蔵巡り」を選択したのは414件(36.4%)。
おわりに
臨空エリアとしての今後の活動
継続的な取り組み
インバウンド誘客にはターゲット国とその属性を定め、PDCAサイクルによる継続した取組が必要であると考えています。
臨空エリアとしてターゲット国を定めるには、まだ調整や議論が必要と考えますが、単年度ベースでの取り組みとならないように、今後も参画市町や広島空港、観光関連団体と継続して連携していく必要あると考えています。
効果的な観光案内
予算等もあり現地トラベルショーに出張した人員は4市町から1名ずつの計4名(以下、出張者)となりました(2市町は辞退)。
トラベルショー来場者で日本語や英語を話される方の割合が高い印象を受けましたが、大半の方々とのコミュニケーションは韓国語となります。韓国語を話す出張者はいなかったため、4名の通訳の方々が出張者の観光案内サポートを行いました。
今回、依頼した通訳スタッフの方々は大変優秀な方々であったため、もともと日本や広島の観光に関する知見を有しており、さらに出張者の臨空エリアに関する案内を1、2回訳しただけで、自身の知識として以降は来場者に能動的に訴求してくださいました。
出張者と来場者の共通言語がない旅博は、通訳スタッフのスキルが非常に重要であることを実感したことから、信頼できる会社と関係を構築し、現地渡航前にオンライン等で事前に全市町と通訳の方々とのミーティング機会を設け、パンフレットやチラシに記載・表現されていないストーリーや伝聞などもお伝えすることで、出張できない市町も観光情報を来場者の方々へ効果的に案内できるのではないかと考えます。
DMOアクション
旅博へのDMO参画
今回、ディスカバー東広島は現地出張のみに留まり、アンケート調査の設問設計には関われず目的に沿った参画は叶いませんでした。今後もDMOとして参画する場合は、旅博後の具体的なアクション決めやターゲット属性選定に繋げられるように設問設計段階から関わることが重要な参画条件になると考えています。
プロモーションと受入環境整備
韓国からの訪日観光客1人当たり消費単価は11.2万円と他国に比べ低いものの、来訪者数はその高いリピート率もあり202.1万人と最も多く(観光庁7-9月速報。2位中国:189.3万人)、広島⇔仁川の直行便も1日2便就航し、ポジティブな要因を確認することができます。また実際に東広島に訪れている外国人旅行者で韓国人の方々が占める割合も最も高くなり9.3%(2023年観光統計調査)となります。
ディスカバー東広島として韓国をターゲット国に設定し、具体的なアクションプランに落とし込んでいくまでにはまだ至りませんが広島臨空広域都市圏振興協議会や広島空港振興協議会が継続して韓国をターゲット国とする場合は参画目的に沿った形で連携していくと同時に、日本酒をキーコンテンツとして訴求していく際は旅博出展の他に日本酒興味関心層に効率よくアプローチする手法も検討していきます。
今後のアクションとしては、韓国語や中国語等の観光パンフレットを観光案内所やホテルに設置し、その消費ペースや外国人アンケート調査の結果に鑑みて、東広島のインバンド動向をモニタリングし、また引き続き広域団体や周辺市町DMO、観光関連団体との連携を強め、インバウンドターゲット国とその属性を選定することで、ターゲット国に適した言語によるガイディングツアーの造成など誘客促進と同時に受入環境整備を進めていきます。