〜目次〜
はじめに
ディスカバー東広島では地域農家さんと連携して今までに農業・収穫体験を多く実施してきました。当コラムではターゲット設定やコンテンツ内容、継続開催を行う上で重要なことなど、これまでの気づきを記載しています。
目的整理と体験内容の決定
実施目的の整理
ディスカバー東広島では地域事業者さんと連携してイベントを実施する際は必ず、目的整理を行っています。
↓↓目的整理に関する記事はこちら↓↓
今まで連携した農家さんがイベントを実施される際に設定される目的で多いものは以下の通りとなります。
- 事業者とその生産品の認知度UP
- ファン層の形成
- 農業体験を通じた食育の提供
- 就農希望者への農業の魅力発信
ターゲットと体験内容の決定
目的を整理した上で、次に誰にどのような体験を提供していくかを決めていきます。
ターゲット設定
観光農園のようなハード設備を整え通年で体験できるようなコンテンツとは異なり、地域の農家さんが年に数回行う農業イベントの商圏はおのずと近隣(市内や周辺市町)の人口密集エリアとなります。
就農希望者に対するイベントに限り、メインのターゲットエリアは東京や大阪などの都市部となり、体験だけではなく、補助制度の案内や移住定住支援等も必要となり、農協組合や行政との連携が必要になるため、ここではレジャー体験の場合のみを記載しています
収穫・農業体験への参加が多いのは食への関心が高いシニア層や子育て世代となります。東広島の場合、母数としてはファミリー層が最も多くなるため整理軸の家族構成はファミリー層としてセグメンテーションを行います。
さらに今までに行ったアンケート調査やイベント参加者属性から、親からの自立や習い事、受験勉強準備等によって小学校4年生以上のお子さんを持つご家庭は参加率が著しく下がる傾向にあるため、ヤングファミリー層をターゲットとしています。
体験内容とワンポイント
1つの体験に対する子供の集中力は1時間弱となるため、実施目的に合わせて食育に関する絵本の読み聞かせや、日常使いに結び付く試食会※、加工食品づくり体験、農園での生物観察などを組み合わせて実施しています。また日本の農業を縁の下で支えている技能実習生との文化交流も満足度が高い結果となっています。※試食を伴う場合は保健所へ知らせ等が必要になる場合があります。
その他の工夫として、体験場所にトラクターなどを配置したり、作物の葉が特徴的な場合はお面作りなどを行うことで撮影シーンを自然に演出し、参加者のSNS等から農家さんの活動を拡散してもらうように取り組んでいます。
さらに作付け体験の場合は、作物の成長過程を農家さんのSNS等から発信することでイベント終了後も参加者との繋がりを保ち、収穫体験の際のリピーター獲得やファン層の形成も行っています。
家族単位での平均参加人数は3人となり、ご両親とお子さんや親御さん1人ときょうだいなどのパターンが多くなることから、安全管理上で年齢制限を設けなければならない場合は予め下のお子さん(弟・妹)の参加可否なども農家さんと決定し、予約サイトに記載することで問合せ対応の負担軽減を行っています。
プロモーションを実施する際は、上記したことから「近隣の人口密集エリア」「小学校3年生以下のヤングファミリー層」「アウトドア・自然好き」等の整理軸で絞り込みを行いSNSからの配信やチラシの内容や設置場所を決定しています。
体験産品の選定
農業・収穫体験イベントで集客力に最も大きな影響を及ぼす要素は産品の種類になります。
イチゴやブドウ、みかんなどの果実の収穫体験は他ジャンルのレジャーアクティビティと比較してもニーズや集客力が高く、商圏も広い体験となります。さらに農家さんは本来、手作業によって収穫し、梱包・出荷しなければならないデリケートな果実類ですが、収穫体験とすることで農家さんの作業負担を軽減するメリットもあらわれています。
続いてコンテンツと成りうる作物としては、体験系の米(田植え&稲刈り体験)、サツマイモ(焼き芋体験)、シイタケ(原木づくり)等が今までにニーズが高かった作物となります。田植え体験や稲刈り、サツマイモの収穫体験は保育施設や小学校のカリキュラムにも取り入れられていることが多いですが、「農業・収穫体験」としてのイメージも強く集客は比較的容易な作物となります。
一方でそれらの体験自体には価値があるものの、希少性や模倣性の観点から差別化が難しく、料金設定を上げづらいためイベント開催による収益UPは目的になりにくく、あくまでも最初に設定した実施目的を達成することを意識する必要があります。
最後に一般的な作物は残念ながら訴求力が弱くなります。例えばサトイモは鮮度が落ちやすくスーパーの生鮮食品売り場に並ぶころには味が落ちてしまうため、採れたてを食べてほしいという農家さんの想いから、サトイモの収穫体験を企画実施しましたが集客に苦戦する結果となりました。またネギの収穫体験も企画したことがありますが集客不足により催行することができませんでした。
農家さんによっては体験ニーズの高い産品を生産されいない場合もあるため、上記した傾向があることを予めお伝えし、集客不足によって催行できなかった場合も機運やDMOとの関係への影響を最小限に抑えるようにしています。
持続的な取り組みにするために
イベント実施に意欲のある農家さんであったとしても予約受付や問い合わせ対応、当日のオペレーションを自身だけですべて担うのは、特に収穫シーズンは繁忙期となり、ハードルが高くなります。シーズン期間中の継続開催や年に複数回実施する場合などは民間事業者やDMOなどと連携して運営体制を整えることで持続的に体験を提供することができると考えています。