ディスカバー東広島では、広島県を訪れる外国人観光客の旅行行動や東広島市への関心を把握し、今後のインバウンド誘客施策に活用することを目的として、外国人観光客を対象とした対面アンケート調査を実施しました。
本調査は、既に東広島市を訪れた外国人観光客ではなく、広島平和記念資料館、宮島、広島空港を利用する外国人観光客を対象としています。
広島県を訪れている外国人観光客が、どのように旅行の予定を決め、どのような情報媒体を利用しているのか、また、西条酒蔵通りをはじめとする東広島市の観光資源にどの程度関心を持っているのかを把握することで、広島市や宮島等を訪れる観光客の東広島市への周遊促進につなげることを目指しました。
〜目次〜
調査の背景
広島県内には、広島平和記念公園や宮島をはじめ、海外でも高い認知度を持つ観光地があります。一方、東広島市への外国人観光客の誘客を進めるためには、県内を訪れている外国人観光客に対し、東広島市を次の訪問先として認知してもらい、実際の旅行行程に組み込んでもらう必要があります。
ディスカバー東広島が2025年に実施した、東広島市を訪れた外国人観光客を対象とするアンケート調査では、酒蔵見学、日本酒の試飲、酒蔵通りの散策など、「酒」を核とした観光体験が来訪動機となっていることが確認されました。
また、WEBサイトや検索、口コミ等が来訪の意思決定に影響している一方、外国人向け情報や営業時間、観光の始め方が分かりにくいといった課題も把握されています。
既に東広島市を訪れた外国人観光客を対象とした調査結果は、以下からご確認いただけます。
こうした結果を踏まえ、今回の調査では、対象を広島県内を旅行している外国人観光客に広げ、東広島市の認知度や訪問意向、旅行中の空き時間、情報収集行動、お土産の購入状況等を把握しました。
調査概要
- 調査対象:広島県内の観光地等を訪れた外国人観光客
- 調査方法:調査員による対面聞き取り調査
- 調査地点:広島平和記念資料館、宮島、広島空港
- 調査期間:2025年10月から12月
- 回答数:120件
- 主な調査内容:旅行者属性、広島県内の滞在状況、旅行計画の決定時期、情報収集媒体、県内観光地の認知度、西条酒蔵通りへの訪問意向等
調査結果については、回答者単位のデータを用いて、属性、旅行行動、情報媒体、西条酒蔵通りへの訪問意向等を組み合わせた追加分析を行いました。
調査結果を解釈する上での留意点
今回の調査は、3つの調査地点で協力を得られた外国人観光客を対象としており、広島県を訪れる外国人観光客全体の構成をそのまま示すものではありません。
出身国・地域や旅行形態によって回答の得やすさに差があったほか、団体旅行者は調査協力を得にくく、個人旅行者や比較的若い層が多く含まれている可能性があります。
また、2025年11月以降は日中関係の悪化により、中国本土からの観光客が調査地点で減少傾向にあったことや、台湾・韓国からの回答者が広島空港に集中していたことにも留意が必要です。
このため、本調査は市場規模を推計するものではなく、今後の施策につながる仮説を把握するための探索的な調査として活用します。
調査結果
西条酒蔵通りへの訪問意向
西条酒蔵通りへの訪問意向について、「絶対訪れたいと思う」または「訪れたいと思う」と回答した強い訪問意向層は44人で、全体の36.7%となりました。
また、「機会があれば訪れたいと思う」と回答した人は52人、43.3%でした。両者を合わせると、回答者の約8割が西条酒蔵通りへの来訪に一定の関心を示しています。
一方で、「機会があれば訪れたい」という回答は、関心はあるものの、現時点では具体的な旅行行程に組み込まれていない状態とも考えられます。
この層に対し、交通アクセス、所要時間、現地でできる体験などを分かりやすく示すことで、実際の来訪につなげられる可能性があります。

訪問意向が高い旅行者の特徴
強い訪問意向を示した44人について見ると、30代が19人と最も多く、旅行形態では、航空券や宿泊施設等を個別に手配した旅行者が33人、75.0%を占めていました。
また、広島県への訪問が初めての旅行者が38人、86.4%を占めています。
国籍別では台湾と韓国がそれぞれ10人と多くなっていますが、台湾・韓国の回答者は広島空港での調査に集中しています。このため、国籍による違いだけでなく、調査地点や利用交通機関の違いが結果に影響している可能性があります。
現段階では、特定の国籍のみを重点市場として断定するのではなく、広島空港を利用する東アジア圏の個人旅行者を有望な対象の一つとして、施策の効果を検証していくことが重要と考えられます。
半日以上の空き時間を持つ旅行者が多い
強い訪問意向層44人のうち、広島県内の旅行中に4時間以上の予定が決まっていない時間を持つ人は29人で、65.9%でした。
「機会があれば訪れたい」と回答した潜在層52人においても、26人、50.0%が4時間以上の未定時間を持っていました。
この結果から、東広島市への来訪に関心を持つ旅行者の中には、旅行日程に一定の余裕を持つ人が少なくないことが分かります。
一方、関心があっても、西条までの移動方法や所要時間、現地でどのような体験ができるのかが分からず、旅行行程に組み込めていない可能性があります。
東広島市への誘客においては、観光資源の魅力を紹介するだけでなく、「何時間あれば楽しめるのか」「どこから、どのように行けるのか」まで具体的に示すことが必要です。

旅行前の情報発信が重要
広島県内の観光予定を決めた時期を見ると、強い訪問意向層の84.1%、潜在層の84.6%が、母国または日本を訪れる前の国にいる段階で予定を決めていました。
このことから、広島県到着後の情報提供だけでなく、訪日前の検索や旅行計画の段階で東広島市の情報に接触してもらうことが重要と考えられます。
情報収集媒体については、強い訪問意向層の50.0%、潜在層の57.7%がGoogleマップを利用していました。SNSやYouTube等の動画媒体も、それぞれ約4割の旅行者が利用しています。
今後は、多言語WEBサイトの整備に加え、Googleマップ上の施設情報、検索結果、SNS、動画等を組み合わせ、旅行者が普段利用する媒体から東広島市の情報に到達できる環境を整える必要があります。

調査地点による訪問意向の違い

広島平和記念資料館
広島平和記念資料館で回答した旅行者のうち、西条酒蔵通りへの強い訪問意向を示した割合は60.0%となり、3地点の中で最も高い結果となりました。
広島市内に滞在し、日本の歴史や文化に関心を持つ旅行者に対して、西条酒蔵通りを「広島市から訪れることができる、もう一つの日本文化体験」として提案できる可能性があります。
広島駅や広島市内の宿泊施設等と連携し、鉄道で移動できる半日観光先として情報発信することが考えられます。
広島空港
広島空港では、強い訪問意向層と潜在層を合わせた割合が87.9%となりました。
空港利用者に対しては、西条酒蔵通りを、到着後に広島市へ向かう途中の立ち寄り先や、次回の広島旅行で訪れる場所として提案することが考えられます。
ただし、今回の調査は空港利用時点で実施しているため、既に旅行を終えた回答者が含まれている可能性があります。空港での情報発信については、即時の来訪だけでなく、次回の来訪意向やWEBサイトへのアクセス等も含めて効果を検証する必要があります。
宮島
宮島では、強い訪問意向を示した割合は13.5%でしたが、「機会があれば訪れたい」と回答した割合は54.1%でした。
宮島観光と同じ日に西条へ移動することは、時間や旅行行程の面で選ばれにくい可能性があります。
そのため、宮島では当日の立ち寄り先として訴求するだけでなく、広島県内に複数日滞在する旅行者に向けた別日の観光先や、次回の広島旅行で訪れる場所として認知を促すことが考えられます。
西条酒蔵通りに期待される体験
強い訪問意向層が西条酒蔵通りを訪れたい理由として、最も多かったのは「日本酒の試飲やお土産購入をしてみたい」で、次いで「和の雰囲気の街並みを歩いてみたい」「酒蔵見学をしてみたい」が挙げられました。
この結果から、外国人観光客に向けた西条酒蔵通りの体験は、日本酒の試飲だけではなく、酒蔵見学、歴史的な街並み、食、買い物を組み合わせたものとして伝えることが重要です。
また、飲酒をしない旅行者や同行者も一緒に楽しめるよう、仕込み水、酒を使った料理やスイーツ、酒造りの歴史、ユネスコ無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」体験等を組み合わせることで、より幅広い旅行者に選ばれる可能性があります。
調査結果を踏まえた今後の方向性
多言語モデルコースによる旅行行程の具体化
今後は、外国人観光客が西条酒蔵通りへの訪問を具体的に検討できるよう、多言語でのモデルコースを充実させます。
例えば、次のような旅行条件に応じたコース設定が考えられます。
- 広島駅から訪れる半日コース
- 広島空港到着後に立ち寄るコース
- 2~3時間で楽しむ短時間コース
- 酒蔵見学、試飲、食事を組み合わせた半日コース
- 飲酒をしない旅行者も楽しめる街並み・歴史文化コース
モデルコースには、交通手段、所要時間、予約の要否、営業時間、荷物の預け場所等を掲載し、旅行者がそのまま旅行計画に採用できる情報を整備します。
Googleマップや検索導線の強化
アンケート調査では、Googleマップが主要な情報収集媒体となっていました。
酒蔵、観光案内所、飲食店等について、多言語での施設名称、営業時間、試飲や見学の可否、予約の要否、写真、最寄り駅からの経路等を確認し、旅行者が必要な情報に到達しやすい環境を整備します。
あわせて、多言語WEBサイトのモデルコースや施設情報が検索結果から見つかりやすくなるよう、検索キーワードやページ構成の改善を進めます。
広島県内の観光関係者との連携
広島市内の宿泊施設、観光案内所、交通事業者、広島空港等との連携を通じ、県内を訪れている外国人観光客に対する情報接点を増やします。
また、宮島を訪れる旅行者に対しては、同日中の移動だけでなく、広島県内に複数日滞在する場合の別日の観光先として、東広島市を提案することが考えられます。
ディスカバー東広島では、宮島がある廿日市で新たに設立された観光地域づくり法人との連携も進めています。今後、互いの観光情報や旅行者の行動傾向を共有し、宮島と東広島市を含む広域的な周遊ルートや、滞在日数に応じた旅行モデルの検討を進めます。
各地域が単独で誘客するだけでなく、それぞれの強みを組み合わせて旅行者に複数の選択肢を提示することで、広島県内での滞在時間の延長や、地域間の周遊促進につなげることを目指します。
情報発信においては、QRコード等を活用して多言語モデルコースへ誘導し、アクセス数や閲覧後の行動を計測することで、どの場所や訴求内容が実際の関心や来訪につながるかを検証します。
一度に大規模な施策を実施するのではなく、小規模な情報発信や広告配信から効果を確認し、データに基づいて対象市場や媒体、訴求内容を改善していきます。
おわりに
今回の調査から、広島県を訪れる外国人観光客の中には、西条酒蔵通りに関心を持ち、半日以上の未定時間を有する旅行者が一定数存在することが分かりました。
一方で、関心が実際の来訪に結びつくためには、東広島市の魅力を伝えるだけでなく、交通アクセス、所要時間、体験内容など、旅行行程を具体化するための情報が必要です。
今後、ディスカバー東広島では、「東広島市を知ってもらう情報発信」から、「東広島市を旅行行程に組み込んでもらう情報提供」への転換を進めます。
広島市、宮島、広島空港等を訪れる外国人観光客に対し、西条酒蔵通りをはじめとする東広島市の文化、食、自然、体験を組み合わせて提案することで、広島県内での周遊促進、滞在時間の延長、地域における観光消費の拡大につなげていきます。
また、関係事業者、行政、交通事業者、宿泊施設等との連携を深めながら、調査、施策実施、効果検証のサイクルを継続し、外国人観光客に選ばれる持続可能な観光地域づくりを進めていきます。