〜目次〜
はじめに
ディスカバー東広島では、東広島市を訪れる外国人観光客の実態把握と、今後の観光施策の高度化を目的として、2025年通年にわたり多言語アンケート調査を実施しました。
本稿では、その中でも「観光目的」で来訪した外国人観光客の回答(120サンプル)を対象に、来訪動機や行動特性、満足度、消費傾向等を分析し、今後の施策の方向性を整理します。
調査概要
| 調査方法 | インターネット調査 |
| 対象者 | 東広島を訪れた外国人観光客 |
| 言語 | 英語、中国語(繁体・簡体)、韓国語 |
| 調査拠点 | 宿泊施設(3か所)、観光案内所(2か所)、酒蔵(1か所)、その他 酒蔵通りを散策する観光客への調査員からの回答依頼 |
| 設問設計 | 以下、挿入画像参照 |
| 回答数 | 120件 |
| 調査期間 | 2025年1月~12月 |
| 調査実施主体 | 一般社団法人ディスカバー東広島 |
アンケート集計・分析
回答者属性
国籍

年代

同伴者
来訪動機

・観光目的で来訪した120サンプルの来訪理由を見ると、酒蔵見学、日本酒試飲、酒蔵通り散策に関する回答が多くを占めていました。
・このことから、東広島市を訪れる外国人観光客には、「酒」を核としたテーマ性の明確な観光地として認識されている状況がうかがえます。
消費額

・1人あたり1万円以下の支出が59人と最も多く、全体の約半数を占めていました。
・一方で、5万円以上を支出した来訪者も13人確認されており、このうち、10人が事前に東広島市訪問を計画していた来訪者であり、また2泊以上の滞在者が全体の約7割を占めていました。
滞在日数

・日帰り(0泊)が62人と最も多く、全体の約半数を占めていました。
・一方で、3泊以上の滞在者も39人確認されており、東広島市が短時間の立ち寄り先であると同時に、一定の滞在需要も有していることがうかがえます。
認知経路

・東広島市を知ったきっかけとなった情報媒体を見ると、WEBサイト・検索と口コミが多く、来訪前の情報探索と第三者評価の双方が来訪意思決定に影響していることが分かります。
・また、ガイドブックや旅行会社経由の認知も一定数確認されており、複数の情報接点が組み合わさって来訪につながっている様子がうかがえます。
事前計画有無

・観光目的で来訪した120サンプルのうち、90人(約75%)が事前に東広島市を訪問する計画を立てていました。
・一方で、30人(約25%)は事前計画がないまま来訪しており、東広島市が計画的な目的地であると同時に、偶発的に選ばれる観光地でもあることがうかがえます。
満足度

・観光目的来訪者の満足度は全体的に高く、「トイレ等の設備の維持管理」「観光施設スタッフの対応」「地元の方々のおもてなし」では平均4.8以上と高い評価が得られました。
・一方で、「レストランでの多言語対応」は平均4.08と相対的に低く、外国人観光客向けの情報・対応面においては、引き続き改善の余地があることがうかがえます。
推奨度(NPS)

・観光目的来訪者の推奨度を見ると、8~10と回答した来訪者が99人と全体の8割以上を占めており、特に「10(絶対に勧めたい)」は49人と最も多い結果となりました。
・このことから、東広島市は来訪後の満足度が高く、口コミや第三者推奨につながりやすい観光地であることがうかがえます。
不便な点

We didn‘t know exacetly where to start the tour.Not clear information for foreigners.(どこから観光を始めればよいか分からない。外国人向けの情報が分かりにくい。)

Lunch time closed(ランチタイムは営業時間外でした)
・酒蔵通り周辺観光における不便点としては、「どこから観光を始めればよいか分からない」「外国人向けの情報が分かりにくい」といった声が見られました。
・また、営業時間や昼休憩、体験の予約方法が事前に把握しづらいことから、来訪時に選択肢が限られてしまう状況もうかがえます。
来訪歴

・観光目的来訪者の来訪歴を見ると、日本への来訪経験は複数回に及ぶ層が多い一方、東広島市については106人が初訪問となっていました。
・このことから、東広島市は日本旅行のリピーターにとって、新たに選ばれる観光地として認知されている状況がうかがえます。
持続可能な観光地経営

・持続可能な観光地経営に向けた取り組み(試飲時における陶器容器の使用推奨)については、「強く賛同する(10)」と回答した来訪者が大多数を占めていました。
・この結果から、東広島市の脱炭素化を意識した取り組みは、外国人観光客にとっても受け入れられやすく、観光体験の価値向上につながる要素であることがうかがえます。
ホテル選定時の重視ポイント

・ホテル選定時に重視するポイントとしては、観光地へのアクセスの良さが最も多く、次いでレビュー評価が挙げられていました。
・価格を重視する回答も一定数見られるものの、立地や他者評価といった利便性・安心感が、宿泊先選定においてより重視されている状況がうかがえます。
その他意見・感想

I love the calm and peaceful nature of the area and the friendliness of the peopl. I Will come back for sure to Higashi Hiroshima.(この地域の穏やかで平和な雰囲気と住民の親しみやすさが大好きです。必ずまた東広島に戻ってきます。)

Some of the other brewery stores unfortunately had no English signs and their products were not described in English.(残念ながら、いくつかの酒蔵の店舗の中には、英語の看板がなく、商品の説明も英語で書かれていないところもありました。)
・その他の自由意見からは、酒蔵通りの雰囲気や落ち着いた観光環境を評価する声が見られる一方、初めて訪れる外国人にとっては情報の分かりにくさを感じる場面もあることがうかがえます。
・これらの声は、東広島市の魅力をさらに引き出すための情報提供や体験設計の改善余地を示しています。
クロス集計
消費額 × 滞在日数

・観光目的来訪者の滞在日数別に一人当たり平均消費額を見ると、日帰り(0泊)では約1.46万円にとどまる一方、2泊以上の滞在では消費額が大きく増加する傾向が確認されました。
・特に3泊以上の滞在者では、体験や飲食を伴う消費が積み重なり、滞在日数の延長が消費拡大に直結している様子がうかがえます。
滞在日数 × 事前計画有無

・滞在日数と事前計画有無の関係を見ると、日帰り(0泊)来訪者62人のうち46人が事前計画あり、16人が事前計画なしとなっていました。
・一方で、2泊以上の滞在者は合計45人おり、そのうち35人が事前に東広島市訪問を計画していた来訪者でした。特に2泊の来訪者は全員が事前計画ありであり、長めの滞在では訪問前の情報収集や計画形成が一定程度行われていることがうかがえます。
事前計画有無 × 満足度

・観光目的来訪者の満足度を見ると、事前に東広島市訪問を計画していた来訪者は、全体的に高い満足度を示していました。
・一方で、事前計画なしで来訪した層においても一定の満足度は確保されているものの、評価にはややばらつきが見られ、来訪前の情報量や行動イメージの有無が体験の質に影響している可能性がうかがえます。
国籍 × 事前計画有無

・国籍別に事前計画有無を各国籍内の構成比で見ると、アメリカ、台湾、オーストラリア、カナダ、シンガポールでは、いずれも約8割前後が事前に東広島市訪問を計画して来訪していました。特に韓国では、回答者全員が事前計画ありとなっています。
・一方で、香港では約6割、中国では約5割にとどまり、スイスでは非計画来訪者の割合が高い傾向が見られました。ただし、これらの国籍はサンプル数が少ないため、傾向の解釈には留意が必要です。
事前計画あり来訪者 X 認知経路

・Webサイト、検索が30件と最も多く、次いで口コミ・知人紹介が24件、ガイドブックが14件、動画サイトが13件、旅行会社が11件となりました。
・このことから、計画訪問者は特定の単一媒体ではなく、Web検索を中心に、口コミや紙媒体、動画、旅行会社など複数の情報源を組み合わせながら訪問先を検討していることがうかがえます。
・また、Webサイトの具体名としてはGoogle検索や旅行予約サイト等が挙げられており、デジタル接点が訪問計画の形成において重要な役割を果たしていると考えられます。
事前計画なし来訪者 X 認知経路

・Webサイト・検索が16件(59.3%)と最も多く、他の媒体を大きく上回りました。次いで、ガイドブックが7件(25.9%)、個人ブログが4件(14.8%)、友人・家族等の口コミが3件(11.1%)となっています。
・このことから、非計画来訪者においても、Web検索等のデジタル接点が来訪のきっかけとして大きな役割を果たしていることが分かります。また、ガイドブックや個人ブログも補完的に機能しており、移動中や旅行中に接触した情報が偶発的な来訪につながっている様子がうかがえます。
・なお、Webサイト・検索の具体的な接点としては、Google検索やトリップアドバイザー等が挙げられており、旅行中の情報探索行動が来訪判断に影響している可能性があります。
認知経路×国籍

・台湾およびアメリカでは、Webサイトや検索を起点とした認知が中心となっており、特に台湾ではWebサイト・検索の比率が高くなっていました。
・一方で、オーストラリアでは旅行会社、カナダではガイドブックの比率が相対的に高く、国籍によって主な認知経路に違いが見られました。
・また、韓国では認知経路が複数媒体に分散しており、特定の単一チャネルに偏らない傾向が確認されました。
・このことから、市場ごとに有効な情報接点が異なっており、ターゲット国・地域に応じた情報発信チャネルの最適化が重要であることがうかがえます。
事前計画なし来訪者 X 不便点の傾向

・事前に東広島市訪問を計画していなかった来訪者の自由記述を見ると、「どこから観光を始めればよいか分からなかった」「外国人向けの情報が分かりにくい」といった、情報提供に関する指摘が複数確認されました。
・また、飲食店の営業時間(昼休憩・閉店時間)や、各酒蔵・店舗の特徴が事前に把握できなかったという声も見られ、偶発的に来訪した場合ほど、現地での判断に迷いやすい状況がうかがえます。
満足度 × 推奨意向

・総合満足度と推奨意向の関係を見ると、満足度が6の来訪者では、平均推奨意向が9.4と特に高い水準となっていました。
・この結果から、一定水準の満足度を確保するだけでなく、「非常に満足した」と感じる体験をいかに増やすかが、東広島市の推奨意向向上に直結することが示唆されます。
おわりに
本調査により、東広島を訪れる外国人観光客から、東広島市が「酒」を核とした明確なテーマを持つ観光地として認識され、高い満足度と推奨意向を獲得していることが確認されました。
一方で、日帰り・低消費にとどまる来訪者も多く、滞在日数や消費額の拡大には伸び代があることも明らかになりました。
さらに、非計画来訪者を中心に、情報への到達・理解のしにくさ、営業時間や入口案内の分かりにくさといった課題も確認されており、今後は、認知から来訪、滞在、消費、推奨につながる一連の導線を強化していく必要があります。
非計画来訪者・初訪問者に向けた認知と情報導線の再構築
まず取り組むべきは、広島県内を訪れる外国人観光客に対して、東広島市が「立ち寄る理由」「滞在する理由」として十分に想起される状態をつくることです。
2025年、広島県全体では外国人観光客が200万泊以上している一方で、東広島市への来訪は約2万人にとどまっており、多くの外国人観光客が市内を素通りしています。これは、東広島市に魅力がないのではなく、「立ち寄る理由」「滞在する理由」そのものが十分に認知されていないことに加え、具体的な行動イメージにつながる情報が不足していることを示しています。
アンケート調査では、「どこから観光を始めればよいか分からない」「外国人向けの情報が分かりにくい」といった声が確認されました。
ディスカバー東広島が運営する英語サイトでは、既にモデルコース、酒蔵営業時間、体験・ツアー予約ページを整備しています。しかし、今回の調査結果からは、情報そのものの不足というよりも、検索流入者や現地来訪者が必要なページに確実に到達できていない可能性が示唆されました。
よってまずは検索導線の最適化(SEO・ランディングページ強化)を行い、「Saijo sake」「Higashihiroshima brewery」「Sake brewery Hiroshima」等のキーワードで検索した際に、モデルコースや営業時間情報へ直接到達できる構造へ改善します。
さらに、現地との連動強化を進めます。酒蔵通りのサイン、観光案内所、QRコード掲示物等から、英語サイトの該当ページへ直接アクセスできる仕組みを整え、現地で迷った来訪者が即座に情報へ到達できる環境を構築します。あわせて、広島市内のホテルコンシェルジュや交通事業者と連携し、英語サイトへの誘導を強化します。
これらの取り組みにより、既存の情報資産を最大限に活用しながら、「情報はあるが使われていない」状態から、「情報が行動につながる」状態へ転換していきます。特に、WEB検索や現地接触を起点とする非計画来訪者に対しては、情報の分かりやすさそのものが満足度向上施策となり、滞在時間の延長や消費拡大につながると考えられます。
滞在と地域消費を生み出す時間帯と受入環境の整備
認知と情報導線の整備と並行して取り組むべきは、来訪後に滞在・消費につながらない構造的課題への対応です。
調査では、「開いている店が少ない」「昼休憩で閉まっていた」といった声が確認され、時間帯によって観光客が利用できる選択肢が限られる状況がうかがえました。こうした時間帯の断絶は、飲食や宿泊といった地域消費の機会損失につながる可能性があります。
このため、DMOとして、酒蔵・飲食店・宿泊施設等の関係事業者に対し、営業時間の調整や連携に関する働きかけを行っていきます。あわせて、行政と連携し、カフェ等の新規出店や、時間帯をつなぐ受け皿づくりを促進し、観光客が市内で過ごし続けられる環境を整えていきます。
また、滞在型観光を実現するためには、宿泊施設や飲食店における外国人観光客向けのハード整備も欠かせません。多言語対応、食の多様性への配慮など、基礎的な受入環境の底上げを進めることで、「立ち寄れるまち」から「安心して滞在できるまち」への転換を図ります。
これらの取り組みにより、認知された東広島市が、実際に滞在・消費される目的地となる構造を整え、満足度の高い体験を通じて、推奨意向や再訪意欲の向上につなげていきます。
滞在日数と消費額を伸ばす「酒+α」による滞在価値の具体化
調査結果からは、事前に訪問を計画していることだけで、必ずしも滞在日数や消費額の増加につながるわけではないことがうかがえます。事前情報の“深さ”だけでなく、現地で選択できる体験コンテンツの選択肢(量)が不足している場合、計画訪問者であっても日帰り・低消費にとどまる傾向が見られます。
今後は、酒蔵見学・試飲に加え、飲食、宿泊、周辺エリアへの回遊を組み合わせた「酒+α」の体験価値を強化していきます。半日観光にとどまらず、1泊・2泊以上といった複数のモデルコースを明示することで、来訪前から滞在イメージを具体化し、計画訪問者の「計画の質」そのものを高めることを目指します。これにより、酒蔵観光を起点とした滞在時間延長と消費拡大につなげていきます。
高い満足度・推奨度を“自走型集客”につなげる口コミ誘発の仕組みづくり
アンケート調査から、口コミやレビュー評価は、事前計画の有無にかかわらず来訪判断に影響する重要な情報源であることが確認されました。今後も、市内観光関連事業者向けのデジタルマーケティングセミナーや、アジア圏を中心とした外国人市民との連携によるレビュー投稿促進を継続・強化していきます。
あわせて、満足度分析で相対的に評価が低かったレストランでの多言語対応、無料Wi-Fi等の情報通信環境、特産品・お土産の分かりやすさについては、重点的に改善を進めます。これらは滞在中の満足度や消費額に直結する要素であり、満足度5にとどまる層を「非常に満足した」層へ引き上げる鍵となります。
体験の質を底上げすることで、来訪者自身が語りたくなる環境を整え、口コミを起点とした自走型の集客を促進していきます。
持続可能な取り組みを東広島ならではの「選ばれる理由」へ昇華
試飲時における陶器容器の使用推奨に加え、酒づくりに欠かせない地下水を守る取組など、東広島市ならではの持続可能な観光への取り組みを、分かりやすく発信していきます。
これらの取り組みを単なる環境配慮にとどめず、体験価値の一部として位置づけることで、東広島の酒文化と環境への姿勢を一体的に伝えていきます。あわせて、グリーンディスティネーションズTOP100への申請などを通じ、国際的な枠組みを活用した評価獲得にも取り組みます。
データ精度を高め、観光アクションプランのPDCAを回し続ける調査体制の強化
最後に、ターゲット国籍別の施策精度を高めるため、2026年はインバウンドアンケートの取得サンプル数を増加させます。これにより、国籍別クロス集計においても揺らぎの少ない、信頼性の高い分析結果を基に施策検討を行える体制を整えます。
アンケートに積極的に回答する国籍や旅行形態(個人旅行)に偏りが生じる傾向も踏まえつつ、調査設問もブラッシュアップさせ、観光アクションプランのPDCAサイクルを継続的に回す基盤として本調査を位置づけていきます。
施策の実行フェーズ
これらの施策を実効性あるものとするため、ディスカバー東広島では、以下の時間軸で段階的に取り組みを進めていきます。
短期(即実行・2026年度)
- 英語サイトの導線最適化(検索流入からモデルコース・営業時間・予約ページへの直接誘導)
- 酒蔵通りにおける「今できる体験」「所要時間別モデル」の可視化
- 広島市内ホテルコンシェルジュ・交通事業者との情報連携強化
- Googleレビュー対策・MEO支援の継続実施
目的:素通りされている現状を即時改善し、来訪機会の最大化を図る
中期(構造改善・1〜3年)
- 酒蔵直売所と飲食店の営業時間ギャップの調整
- カフェ等の新規出店促進によるアイドリングタイム解消
- 多言語対応・Wi-Fi・決済環境など受入環境の底上げ
目的:滞在時間の延長と地域内消費の最大化
中長期(ブランド確立・3年〜)
- ハード整備を伴う滞在型商品造成
- サステナブル観光のブランド化
- 国籍別データに基づく高度なマーケティング展開
目的:東広島を“選ばれる持続可能な酒都”としてのディスティネーションに確立

