〜目次〜
収穫体験イベントの目的整理
「農業体験イベントを実施してみたい」とのご相談を市内で野菜等を生産されているアグリアライアンスからいただき、連携して落花生の収穫体験を企画実施しました。
初めて連携する事業者さんとは必ず、イベント実施目的の整理をまず行うようにしています。
イベント実施目的
アグリアライアンスとお話して、実施目的を以下の通り整理することができました。そしてこの目的を達成できるように体験内容も組み立てていきました。
- 企業とその生産品の認知度upとファン層の形成
- 体験を通じた食育の促進と農業の魅力発信
- イベントを通じた地域交流機会の創出による地域貢献
イベント内容と工夫点
概要と当日スケジュールは以下の通りとなります。
実施日 | 2021年10月23日(土) |
参加者人数 | 33名 |
スケジュール | 09:30 集合&受付、畑へ移動
09:50 オリエンテーション 10:15 落花生の収穫体験 11:30 絵本の読み聞かせと試食会 ・茹でたて落花生(おおまさり)、焙煎豆の試食 ・敷地内でミニマルシェの開催 11:55 アンケート収集 12:00 自由解散 希望者のみ天日干し場への見学 |
体験で特産品をより身近に
目的達成や参加者満足度を上げるために工夫した点としては、収穫体験だけでなく、試食を通じて調理方法や美味しい食べ方を参加者の方にご案内することで、参加者の方々にイベント後も生産物を毎日の食卓やギフトとして使ってもらえるようにしました。
撮影シーンを演出して魅力を拡散
また参加者の満足度を上げイベント風景をSNS等で体験者から自然に発信してもらえる様に、トラクターなどの農機具を畑に配置するなど写真スポットを事業者さんが意図的につくり、情報を拡散してもらうことも狙いました。
ミニマルシェによる販売
体験終了後もミニマルシェとして事業者さんの生産品や加工品を販売することで、イベント収益のアップにも取り組みました。また目的達成のために体験内容がプロダクトアウトになりすぎないように、興味関心が分かれる可能性がある「天日干し場」の見学は解散後の自由参加としました。
参加者へのメッセージ
食育の促進としては絵本を用いて子供向けに読み聞かせも盛り込みました。さらに事業者さんがカンボジア技能実習生4名の紹介を冒頭で行い、子供たちの収穫体験サポートを実習生が担いました。参加者の方々に体験を通じて、日本の農業を支えてくれている方々のこともお伝えしました。
アンケート分析
イベント終了後の参加者アンケート調査(17件)の結果は以下となります。
満足度と農業イベント参加意欲
- 体験内容は全参加者が5段階評価中、5を選択しており初の主催イベントであるが高い満足度が得られた。
- 料金に関しては体験と土産付きで1,000円と割安な設定にしているが4.5ポイントとなっている。
- 「次回以降の農業体験イベント参加意欲」に関して、4.94ポイントと高い値をしめしている。
農業体験イベントへの参加動機と参加回数
- コモディティ化した農業体験内容では予約・参加までの訴求効果は低い(選択肢1)一方で、落花生の様な珍しい作物に伴う体験とその試食では集客力が高い(選択肢2,3)と考えられる(仮説)。
- 子供の経験や教育のため(選択肢5)だけでなく、子供と一緒に農業体験をしたいという保護者の欲求(選択肢5,6)も参加要因になることが伺える。
参加形態
- ファミリー参加が8組(61%)を占め、その内7組(87%)が市内からの参加となる。
- 子供の参加学年は小学1~4年が11名(68%)となる。未就学児も4名(25%)参加しているが全員が小学1~4年の兄弟と共に参加している。小学5年生以上の参加は1名のみ。
- 小学生5~6年生は習い事や親からの自立、受験勉強等の要因によって週末開催の保護者同伴イベントへの参加率は小学4年生以下に比べ低いと考えられる (仮説)
事業者認知度
参加者の出発地
- 市内からの参加が9組(69%)を占め、その内の8組(88%)が市内人口密集エリア(西条、高屋、八本松)からの参加となる。
定期開催化と他の生産品でのイベント企画
アンケート分析と事業者さんとのフィードバックミーティングから、落花生収穫体験を毎年開催していくこととなりました。
満足度が高く市場性のあるコンテンツであることが分かっただけでなく、生産現場で消費者の方々と直接コミュニケーションがとれる機会も創出することができ、イベント実施目的にも良い効果が表れたことが決め手となりました。
また事業者さんは落花生以外にも野菜や加工食品の生産も行っているため、今回の経験を活かしてその他の生産品でも体験イベントを実施していくことになりました。
おわりに
農業体験が広島市などの都心部だけでなく、自然豊かな東広島市内の方々にもニーズがあることが明らかになったため、ディスカバー東広島としても今回のアンケート分析結果を活かし、市内の農家さんと連携して珍しい作物や収穫後のイベントが見込まれる作物(サツマイモ、米等)の農業体験の企画、実施を引き続き行っていきます。
追記(2022.10.16)
第2回落花生収穫体験を事業者さん自らで企画し、満員御礼で実施されました。ディスカバー東広島は予約サイトの立ち上げやオウンドメディアからのプロモーション支援、そしてイベント内容を体験記事にまとめることで、次回以降の継続開催時の効果的なプロモーションに繋げる取組を行いました。
追記(2023.10.27)
事業者さんがメディアに対して当農業体験に関するプレスリリースを実施し、テレビで放送されたことでイベント実施目的である認知度形成や農業の魅力発信を体験者だけでなく、幅広い方々に対しても行うことができました。
また今まで大人1,000円/人、中学生以下無料としていた料金設定も、これまでのアンケート調査やノウハウ蓄積によって体験内容をブラッシュアップさせ、大人2,000円/人、中学生以下1,000円/人に設定しても問題なく催行することができ、リピーターの方々も見られるイベントとなりました。
まだまだ観光地としては認知されていない東広島市において、イベントの実施目的を整理して事業者さん自らが主体的に取り組まれた今回の結果は、観光エコシステムを形成していく上で重要なグッドプラクティスの一つであると考えています。
スモールステップではありますが、今後も意欲ある事業者さん等と連携して持続可能な観光地域づくりを促進していきます。