〜目次〜
はじめに
ディスカバー東広島では、観光地経営を進めるうえで、関係団体や地域事業者の方々との意見交換を行うため、「東広島市観光推進会議」を実施しています。
令和7年度は委員の方々への事前アンケートをもとに議題を設定し、その一つとして「周遊促進による市内滞在時間の伸長」が取り上げられました。
また、DMOアクションプランでは、広島県内のファミリー層等をターゲットにした広島県央エリアやせとうちエリアの周遊という視点を踏まえながら、来訪者の滞在時間を伸ばす取組が重要なテーマとなっています。
そこで今回、ディスカバー東広島では、観光統計データや人流GPSデータも活用しながら、東広島市内の周遊促進を目的としたデジタルスタンプラリーを企画・実施しました。
実施目的
本企画の目的は、主に次の2点です。
- 地域店舗や観光スポットとの連携による周遊促進と市内滞在時間の伸長
- 今後の情報発信や消費促進につなげるCRM(顧客関係管理)の構築
単発のキャンペーンとして終わらせるのではなく、来訪者との接点をつくり、その後の情報発信・再訪・消費促進の最適化へとつなげることを目指して実施しました。
企画概要とワンポイント
企画概要
東広島市LINE公式アカウントの友だち登録者を対象に、実施した本企画の概要は以下のとおりとなります。
| 実施期間 | 2026年2月〜3月(2カ月間) |
| 対象者 | 東広島市LINE公式アカウント「観光・おでかけメニュー」利用者 |
| 参加方法 | 参加スポットでQRコードを読み取り。※6スポット毎に抽選応募可 |
| 当選景品 | 東広島市特産品詰合せ20名 |
| スポット数 | 市内約30スポット |
| 特設ページ(以下、LP) | https://higashihiroshima-kanko.jp/feature/line-stamp-rally/ |

データをもとにした企画立案
本企画は、感覚ではなくデータをもとに周遊促進施策を設計した点が大きな特徴です。
ディスカバー東広島では、毎年実施する観光統計調査の来訪者の立ち寄り傾向や市内周遊の実態把握を進めています。
そうした分析の中で、道の駅西条が東広島観光の主要拠点の一つであることや、周辺観光との接続可能性が見えてきました。そこで、人流GPSデータも参考にしながら、道の駅や既存の来訪拠点と前後で立ち寄られやすいスポット、動線上で回遊しやすいスポットを組み込んだ企画設計を行いました。これは、来訪先を増やすだけでなく、市内滞在時間の伸長を狙ったものです。

当初は、道の駅で一定額以上の消費を行った方に対し、観光スポット等で割引を提供する仕組みも検討していました。しかし、消費の確認方法、店舗側の運用負荷、制度設計、景品表示法等の観点から、運用ルールが複雑になりやすく、参画店舗や利用者の拡大にも課題が想定されました。
そこで、より参加しやすく、周遊そのものを促進しやすい方法として、デジタルスタンプラリー方式へと企画を組み替えました。
東広島市公式LINEを活用
本企画では、東広島市LINE公式アカウントを基盤としてデジタルスタンプラリーを実施しました。
デジタルスタンプラリーの実施方法には、主にブラウザ型とアプリ型があります。アプリ型は機能面や独自性に優れる一方で、参加者に新たなアプリのダウンロードを求める必要があり、参加開始時のハードルが高くなりやすい特徴があります。
一方、ブラウザ型は、専用アプリの追加ダウンロードが不要で参加しやすい反面、プライベートモード利用時の不具合や、機種変更時に履歴が初期化される可能性があるなど、運用上の注意点があります。
こうした特性も踏まえたうえで、今回は多くの人が日常的に利用しているLINE上で参加できる形を採用し、新たなアプリのダウンロードというハードルなく参加できる仕組みを構築しました。
ゲーム要素による継続参加促進
今回は、単にスタンプを集め抽選に応募するだけでなく、スタンプ獲得に応じて表示画像が変化したり、レベルアップ感を可視化することで、ゲーム要素による継続参加の促進も意識しました。
こうした設計により、企画途中での離脱防止や、複数スポット訪問への動機づけにつなげています。
また、今回の基盤整備は、これまで進めてきた東広島市公式LINEアカウント活用の延長線上にあります。
既存のLINE基盤を活用することで、追加コストを抑えながら観光DXを進めることができ、今後のCRM推進にも接続しやすい仕組みとなりました。

今回、LINEアカウント上でデジタルスタンプラリー機能を実装いただいた東広島市役所DX推進チームの皆さまには、企画趣旨をご理解のうえ、多大なるご協力を賜りました。この場を借りて御礼申し上げます。
波及効果を意識したスポット選定
参加スポットの選定にあたっては、道の駅 西条との前後観光傾向だけではなく、地域経済への波及も意識しました。
具体的には、DMOが中心となって運営する観光WEBサイト「ヒガシル」に掲載されている地域産品を活用している飲食店を優先的に選定しました。
また、LPには通年で閲覧数の多いモデルコースも掲載し、企画単体ではなく、東広島観光全体の周遊導線の中で活用できるようにしています。対象スポットは飲食店、買い物、観光スポット、体験コンテンツなど幅広いカテゴリで構成しています。
企画プロモーション
企画の認知拡大に向けては、複数の媒体と現場接点を組み合わせてプロモーションを実施しました。
まず、観光WEBサイト「ヒガシル」等のオウンドメディアを活用し、企画内容や参加方法を発信しました。あわせて、ローカルメディアでの情報掲載や、道の駅 西条でのポスター掲出、観光ブース出展時の紹介も行いました。中国新聞でも本企画が紹介され、地域内外への認知拡大につながりました。
また、スタンプスポットの店舗・施設の皆さまにもSNS投稿等でご協力いただきました。さらに、企画説明時にスタッフの方へ実際にQRコード読込を体験していただくことで、現場での案内や声かけにつながるよう工夫しました。企画はオンライン上だけで完結するものではなく、現場での理解と巻き込みが周遊施策の実効性を左右するためです。
またポスターは市役所、文化ホール、美術館、商工団体などにも設置し、接触機会の拡大を図りました。
プロモーションにご協力いただいた関係団体、参画事業者、メディア各社の皆さまに、この場を借りて御礼申し上げます。
取組結果と分析
参加者数・獲得スタンプ数・応募者数
企画期間である2026年2月1日から3月31日までの集計では、参加者数は438人、総獲得スタンプ数は921個、抽選応募者数は62人となりました。
主要スポットの獲得スタンプ数
スポット別に見ると、獲得スタンプ数が多かったのは以下の拠点となります。
| 拠点 | 獲得スタンプ数 |
| 観光ブース出展(ひろしまド真ん中祭り|自然でトトノウ会) | 147個 |
| 映画館(T・ジョイ東広島) | 96個 |
| パン屋(あすなろベイキングカンパニー) | 83個 |
| 道の駅 福富 | 73個 |
| カフェ(くぐり門珈琲店) | 53個 |
| 酒蔵(賀茂鶴) | 51個 |
| スーパー銭湯(天然温泉ホットカモ) | 51個 |
| 直売所(福富物産しゃくなげ館) | 45個 |
初回スタンプ獲得スポット
参加者が最初にスタンプを獲得したスポットを集計すると、企画への入口として機能した拠点が見えてきます。上位は以下のとおりでした。
- 観光ブース出展(ひろしまド真ん中祭り|自然でトトノウ会):145人
- 映画館(T・ジョイ東広島):39人
- パン屋(あすなろベイキングカンパニー):38人
- 道の駅 福富:24人
- スーパー銭湯(天然温泉ホットカモ):20人
この結果から、イベント性のある企画や集客力の高い既存拠点が、スタンプラリー参加の最初の接点として機能しており、獲得スタンプ数ランキングとも相関関係にあることが伺えます。
今後は、初回獲得スポットの特性を踏まえながら、そこから次の訪問先へ自然に回遊してもらえる導線設計をさらに高めていくことが重要です。
応募者の認知経路
抽選応募時(N=62)に簡単なアンケートを設けており、認知経路(複数回答可)を集計したところ、最も多かったのは市公式LINE(29.0%)で、次いでローカルメディア紙面(21.0%)、ヒガシル(WEBサイト・SNS等)(17.7%)でした。そのほか、道の駅西条(11.3%)、参画店舗(11.3%)も一定の効果を示しました。
この結果から、デジタル施策だけでなく、紙媒体、現地掲出、店舗接点を組み合わせた周知が有効であったことが確認できます。特に市公式LINEは、参加導線と認知導線の両方を担う媒体として機能しました。
応募者属性
応募者の発地を見ると、東広島市内が48人(77.4%)、東広島市外が14人(22.6%)でした。まずは市内在住者を中心に参加が広がった一方で、市外からの参加も一定数見られ、域内向け施策にとどまらない可能性も確認できました。
世代別では、30代が25.8%で最も多く、次いで20代が24.2%、50代が21.0%、40代が17.7%、60代が11.3%でした。
ファミリー層や行動力の高い中堅世代との親和性が高い結果であり、DMOアクションプランのターゲット層にも合致し、今後の情報発信やスポット選定を考える上でも参考になります。
新規訪問スポット
応募者に対して、「今回の企画をきっかけに知らなかった・初めて行った場所」がいくつあったかを集計したところ6スポット中、平均値は2.13か所、中央値は2か所でした。
この結果は、参加者1人あたり平均して2か所程度の新規訪問先が生まれたことを示しており、本企画が単なる再訪促進だけでなく、新しい場所を知る・行ってみるきっかけの創出にもつながったことを示しています。周遊促進施策として、一定の成果があったと考えられます。
おわりに
見えてきたエリア課題
今回の結果からは、エリアごとの課題も見えてきました。特にせとうちエリアでは獲得スタンプ数が比較的少なく、通年で集客できる拠点の必要性が明らかになりました。
今後は、既存の観光拠点との接続や、イベント時だけでなく平時にも立ち寄りを促せるスポットづくりを進めることで、エリア全体の周遊性を高めていく必要があります。
周遊施策を広げていくうえでは、拠点ごとの集客力や導線の違いを踏まえた設計が重要となります。
通年運用と商工団体連携
今回のデジタルスタンプラリーでは、多くの参加者と応募者を得ることができ、周遊促進に一定の効果が確認できました。こうした結果を踏まえ、2026年4月中旬から企画の通年運用を開始します。
今後は、3カ月ごとにスポットを入れ替えることで、季節ごとの周遊提案を行いながら、マンネリ化による離脱防止も図っていきます。
また、初回獲得スポットとして上位に位置づけられる可能性が高い道の駅 西条について、今回はポスター掲出によるゲートウェイ機能のみに留めましたが次回クールではスタンプスポットとして参画いただき、今回との結果の違いを検証していく予定です。
これにより、東広島観光の主要拠点を起点とした場合の周遊促進効果や、他スポットへの波及状況をより具体的に把握していきます。
また、継続運用にあたっては、市内商工団体との連携をさらに深め、スポットの追加やテーマ設定を進めていく予定です。地域事業者や関係団体との協働により、単発企画ではなく、継続的な周遊施策として育てていきます。
UIの改善とCRM推進
デジタルスタンプラリーの継続運用に向けては、UIのブラッシュアップも重要な点となります。スタンプ取得状況の見せ方や達成感の演出、次の訪問先への誘導などを改善することで、参加しやすさと回遊性の向上を図っていきます。
また、本企画を通じて蓄積されたデータは、今後のCRM推進にも活用していきます。例えば、参加者が訪問したスポットに応じて、各スポットのイベント開催情報や、地域産品を活用した新メニュー提供情報などをセグメンテーションして発信することで、周遊促進から消費促進へと展開していくことを目指しています。
住民満足度調査への活用
あわせて、デジタルスタンプラリーの運用を継続することで、東広島市公式LINEアカウントの登録者数増加も期待されます。市公式LINEの登録者基盤が広がることは、観光分野にとどまらず、継続して実施する「持続可能な観光に対する住民満足度調査」へのアンケート回答数増加にもつながります。
観光施策をきっかけに市公式LINEの接点を広げることは、将来的に市民意見の把握や各種調査の回収率向上にも寄与する重要な基盤づくりと言えます。
データ公開と地域全体への還元
本企画の集計・分析結果やPDCAサイクルの内容をWEBサイト上で公開し、施策の透明性と再現性を高めていきます。
また、参画スポット毎にも集計・分析データを提供することで、現場の事業者の方々が来訪傾向や回遊実態を把握し、次の取組に生かせる環境づくりを進めます。
こうしたデータ共有を通じて、地域全体でデータを活用しながら観光施策を検討する、データドリブンな風土形成につなげていきたいと考えています。