〜目次〜
はじめに
ディスカバー東広島では、東広島市観光の現状把握と今後の施策検討を目的として、2025年度に「東広島市観光に関するWEBアンケート調査」を実施しました。
本調査では、広島県内外における東広島市の認知、訪問経験、観光資源への関心、情報収集経路、旅行形態、観光消費額等を把握し、今後の観光戦略の参考とすることを目的としています。
ディスカバー東広島の観光アクションプランでは、観光消費額の向上に向けて、消費単価の高いインバウンド旅行者や県外在住の旅行アクティブ層に重点的に取り組む方針を掲げています。特に、県外在住者に対しては「多彩な銘柄と豊かな特産品メニューから織りなすペアリンググルメ体験」を重点コンセプトとして位置づけています。
そこで本稿では、WEBアンケート調査の追加クロス集計結果をもとに、アクションプランにおける重点ターゲットである 「宿泊を伴う県外からの観光客、かつ、食や日本酒への興味関心が高い層」 に焦点を当て、来訪理由、宿泊形態、観光消費額、情報接点、市外宿泊の理由等を分析しました。
本分析を通じて、東広島市における食・日本酒を軸とした観光消費拡大の可能性と、今後取り組むべき方向性を整理します。
調査概要
本調査の全体回収数は8,456票、本調査対象者は1,485票となりました。今回の重点分析では、特に以下の視点で追加クロス集計を行いました。
・県外在住者の旅行形態
・宿泊を伴う県外観光客の来訪理由
・食・日本酒・酒蔵通りへの関心と観光消費額の関係
・市外宿泊者が東広島市外に宿泊した理由
・旅行前、旅行中の情報接点
これにより、県外観光客のうち、食や日本酒への関心が高い層が、どのような理由で東広島市を訪れ、どの程度消費し、どのような情報接点を通じて来訪しているのかを確認しました。

アンケート集計・分析
県外観光客は宿泊を伴う割合が高い一方、市外宿泊が多い

追加クロス集計では、県外在住者のうち、観光・遊び・レジャー・体験・スポーツを目的として東広島市を訪れた人は447人でした。
このうち、日帰りは115人、東広島市内のみに宿泊した人は102人、東広島市外のみに宿泊した人は173人、東広島市内・市外の両方に宿泊した人は57人となりました。
割合で見ると、宿泊を伴う来訪者は全体の約4分の3を占めています。一方で、最も多いのは「東広島市外のみに宿泊」した層であり、県外観光客の多くが東広島市を訪れているものの、宿泊地は広島市や宮島周辺など市外に流れている状況がうかがえます。
この結果から、県外観光客に対しては、いきなり市内宿泊への転換のみを目指すのではなく、まずは市外に宿泊している観光客を、東広島市内での飲食、土産購入、体験消費へ誘導することが重要と考えられます。
市内宿泊者では「グルメ・日本酒」が来訪理由として高い

県外在住者の来訪理由を見ると、「日本酒の文化や歴史に触れるため」「酒蔵通りの景観や歴史的な街並みを歩くため」「東広島ならではのグルメや日本酒を味わうため」が上位に挙がりました。
特に、東広島市内のみに宿泊した層では、「東広島ならではのグルメや日本酒を味わうため」が38.2%と高く、食・日本酒が市内宿泊者の来訪理由として一定の力を持っていることが確認されました。
また、市外宿泊者においても、「日本酒の文化や歴史に触れるため」「酒蔵通りの景観や歴史的な街並みを歩くため」「広島市や周辺観光地からのアクセスが良いため」が高くなっており、市外宿泊者であっても東広島市の日本酒文化や酒蔵通りへの関心を持っていることが分かります。
このことから、東広島市は、県外観光客に対して「酒蔵通り」「日本酒文化」「地域の食」を組み合わせた観光地として訴求できる可能性があります。
食・日本酒への関心は、観光消費額の高さと結びついている

観光消費額を見ると、県外在住者全体の平均消費額は31,378円でした。
これに対し、「日本酒の文化や歴史に触れるため」と回答した層の平均消費額は36,761円、「酒蔵通りの景観や歴史的な街並みを歩くため」と回答した層は36,816円、「東広島ならではのグルメや日本酒を味わうため」と回答した層は39,792円となり、県外在住者全体の平均を上回りました。
特に、「東広島ならではのグルメや日本酒を味わうため」と回答した層では、飲食費、土産・買い物代、宿泊費のいずれも比較的高く、食・日本酒への関心が観光消費額の向上に結びついている可能性が示されました。
これは、アクションプランで掲げる「多彩な銘柄と豊かな特産品メニューから織りなすペアリンググルメ体験」の方向性と一致する結果です。東広島市の強みである10の酒蔵、多様な日本酒、安芸津の牡蠣、美酒鍋、酒スイーツ、地域食材等を組み合わせることで、消費単価の向上につながる観光体験を形成できる可能性があります。
市外宿泊の背景には、移動利便性と夜の飲食環境への課題がある

食・日本酒・酒蔵通りに関心がある層であっても、市外に宿泊している理由を見ると、「他の観光地への移動に便利だった」が最も高くなっています。
加えて、「宿泊施設の選択肢が少なかった」「夜に楽しめる飲食店やバーが市外の方が充実していた」「東広島市内に宿泊するという発想がなかった」といった回答も見られました。
特に、「東広島ならではのグルメや日本酒を味わうため」と回答した層では、市外宿泊理由として「夜に楽しめる飲食店やバーが市外の方が充実していた」が32.4%となっており、食・日本酒に関心がある層であっても、夜の過ごし方や飲食環境の認知不足が市内宿泊の妨げになっている可能性があります。
この結果から、市内宿泊を促進するためには、宿泊施設の情報発信だけでなく、夜に楽しめる飲食店、日本酒が飲める店舗、地元食材を使ったメニュー、駅からのアクセス、予約可否、営業時間などを分かりやすく整理することが重要です。
旅行前はSNS・旅行情報サイト・観光サイト、旅行中はホテル・Googleマップが重要

食・日本酒・酒蔵通りを来訪理由とする層の情報接点を見ると、旅行前と旅行中で有効な媒体が異なることが確認されました。
旅行前では、SNS、旅行情報サイト・予約サイト、観光サイト、家族・知人からの口コミが主な情報接点となっています。特に、グルメ・日本酒を目的とする層では、SNS、観光サイト、旅行情報サイト・予約サイト、口コミがいずれも高く、複数の情報源を組み合わせながら訪問を検討している様子がうかがえます。
一方で、広島県への到着後に東広島市への訪問を決めた層では、広島市内の飲食店や宿泊施設での紹介、Googleマップ、広島市内から意外と近いという認知、広島駅や宮島周辺での広告・パンフレット等が来訪のきっかけとなっています。
このことから、旅行前にはSNSや旅行情報サイト、公式WEBサイト等で「食・日本酒・酒蔵通り」の魅力を伝え、旅行中には広島市内や宮島周辺、宿泊施設、Googleマップ上で東広島市への立ち寄りを促す導線を整えることが重要です。
分析結果から見える今後の方向性

今回の追加分析から、アクションプランに掲げる県外在住の旅行アクティブ層に対して、食・日本酒を軸にした施策の有効性が確認されました。
特に、食・日本酒・酒蔵通りに関心を持つ層は、平均消費額が高い傾向にあり、観光消費額の向上に寄与する可能性があります。また、市外に宿泊している層にも、日本酒文化や酒蔵通りへの関心が見られることから、広島市や宮島周辺に宿泊する観光客を東広島市内での飲食・買い物・体験消費へ誘導する余地があります。
一方で、市外宿泊理由として、他の観光地への移動利便性、宿泊施設の選択肢、夜の飲食環境、市内宿泊の想起不足が挙がっており、東広島市で「夜を過ごす理由」や「滞在して消費する理由」をより明確に提示していく必要があります。
ディスカバー東広島では、令和7年度に西条酒蔵通りを核とした観光まちづくりの取組を進め、戦略・戦術の検討、酒蔵・関係事業者へのヒアリング、物件活用の検討、プレイヤーとなる事業者のリストアップ等を進めています。「歩くだけ」から「滞在して消費するエリアに転換する」ことが重要な方向性として整理されています。
今後は、こうした取組と今回の調査結果を接続し、食・日本酒・酒蔵通りを軸とした来街動機の創出、滞在価値の向上、地域事業者との連携による消費拡大を進めていくことが求められます。
今後の取組方針
市外宿泊者の市内消費を取り込む導線づくり
県外観光客の多くは宿泊を伴っていますが、その中で最も多いのは東広島市外に宿泊する層です。そのため、まずは市外宿泊者を東広島市内での飲食、土産購入、体験消費へ誘導することが重要です。
具体的には、広島市や宮島周辺に宿泊する観光客に対して、広島駅から西条酒蔵通りへのアクセスの良さ、半日で楽しめる酒蔵通り散策、地元食材を活かした食事、日本酒や酒スイーツ等の土産購入を組み合わせたモデルコースを提示していくことが考えられます。
また、広島市内の宿泊施設や飲食店、広島駅・宮島周辺の観光接点と連携し、旅行中に東広島市を選択肢として想起してもらう仕組みづくりも重要です。
西条酒蔵通りキーコンテンツ開発
西条酒蔵通りは、東広島市の中心的な観光資源であり、今回の調査でも酒蔵通りの景観や日本酒文化への関心が確認されました。
現在進めている西条酒蔵通りキーコンテンツ開発では、酒蔵の景観や歴史文化を守りながら、買える、食べる、滞在する、体験するという価値を拡張していくことが重要です。
特に、酒蔵通りを「歩いて見る場所」にとどめず、飲食や買い物、体験を通じて滞在時間と消費を生み出すエリアへ転換することが、県外観光客の消費拡大につながると考えられます。
令和8年度事業計画においても、西条酒蔵通りキーコンテンツ開発は拡充事業として位置づけられており、事業プレイヤーの確保、事業実装化に向けた活動、新たなハードコンテンツの開発支援、まちづくり・デザインの共有と合意形成の推進が予定されています。
日本酒と地元食材を組み合わせたペアリンググルメ体験の造成
「グルメ・日本酒」を来訪理由とする層は、県外在住者全体と比べて観光消費額が高い傾向にあります。
この結果を踏まえ、市内10蔵の日本酒と、安芸津の牡蠣、美酒鍋、酒スイーツ、地域の農産物、地元食材を活かした料理等を組み合わせたペアリンググルメ体験の造成を進めることが有効と考えられます。
単に日本酒を紹介するだけでなく、「どの料理と合わせて楽しめるか」「どの店舗で味わえるか」「飲めない人でも楽しめる選択肢があるか」まで含めて情報を整理することで、より幅広い観光客に訴求できる可能性があります。
夜の飲食導線と滞在環境の整備
市外宿泊理由として、「夜に楽しめる飲食店やバーが市外の方が充実していた」という回答が一定数見られました。特に食・日本酒に関心がある層においても同様の傾向が確認されており、夜の過ごし方を提案することが市内宿泊や滞在時間の延長に向けた課題となっています。
今後は、日本酒が飲める店舗、地元食材を使った飲食店、夜営業の有無、予約可否、駅や宿泊施設からのアクセス、ひとり利用・夫婦利用のしやすさ等を整理し、観光客が安心して夜の時間を過ごせる情報環境を整える必要があります。
また、JR利用者向けの「飲める西条」モデルコースや、宿泊施設と飲食店をつなぐ案内、夕方から夜にかけての酒蔵通り周辺の過ごし方の提案も有効と考えられます。
旅行前・旅行中に応じた情報発信の強化
旅行前の情報接点としては、SNS、旅行情報サイト・予約サイト、観光サイト、口コミが重要であることが確認されました。一方、旅行中には、広島市内の飲食店・宿泊施設での紹介、Googleマップ、広島駅や宮島周辺での広告・パンフレット等が来訪のきっかけとなっています。
そのため、旅行前には、公式WEBサイトやSNS、旅行情報サイト等で、食・日本酒・酒蔵通りを軸とした魅力を分かりやすく発信する必要があります。
旅行中には、Googleマップ上の情報整備、広島市内・宮島周辺の宿泊施設や観光案内所との連携、現地で手に取りやすいパンフレットなど、観光客が移動中に東広島市を選びやすくなる接点づくりが重要です。
おわりに

今回の追加クロス分析により、宿泊を伴う県外観光客の中には、東広島市の食・日本酒・酒蔵通りに関心を持ち、比較的高い観光消費につながる可能性のある層が存在することが確認されました。
一方で、関心を持って来訪しているにもかかわらず、宿泊や夜の飲食消費が市外に流れている状況も見られます。これは、東広島市に魅力がないということではなく、食事、滞在、夜の過ごし方、宿泊を含めた行動イメージが、旅行者に十分届いていないことを示していると考えられます。
今後は、アクションプランに基づき、西条酒蔵通りキーコンテンツ開発、食・日本酒を軸としたペアリンググルメ体験の造成、夜の飲食導線整備、旅行前・旅行中の情報発信強化を一体的に進めることで、県外観光客の市内消費拡大と、地域事業者への波及を図っていきます。
また、今回の分析結果を地域事業者や行政、観光関係者と共有し、データに基づいた観光地経営の実践につなげていきます。