〜目次〜
はじめに
オンライン予約決済を導入した無人島アウトドア施設のプロモーションを2024年4月から段階的に開始し、消費データや利用者アンケートの分析を行い、観光消費額UPに向けた施設活用に関して市と協議を行いました。
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クロスメディア
ターゲット属性やファネルの観点から一つの媒体に限らず、複数の手法にて認知形成や利用促進を目的にしたプロモーションを実施しました。
大学掲示板
市内大学のサークルや部活に所属する学生の利用割合が一定数あるというコメントを施設管理者に共有いただき、広島大学Town & Gown Officeに協力を仰ぎ、キャンパス内の掲示板にチラシを掲載していただきました。
Town & Gown Officeとは
市と大学が共に発展するまちづくりを進めることを目的に、東広島市と大学の連携拠点として3大学にTown & Gown Office(=TGO)が設置されています。大学の知見や研究力、東広島市のさまざまな行政資源を提供し合い、二人三脚で市の課題解決に取り組むための連携の基盤を担っています。
ローカルメディア連携
普段から観光情報の発信で連携しており、フリーペーパーを発行している市内ローカルメディアにも協力いただき、行楽シーズンとなる10月に無料で紙面トップに掲載していただきました。
WEB広告
過去の申込情報から施設稼働率が上昇するゴールデンウィークや夏休み、行楽シーズンを見越して、4月から8月にかけてInstagram広告を実施しました。フリーペーパーやDMOのオウンドメディアから東広島市民へは予算をかけずにアプローチすることができるようになったことから、有料広告では配信エリアを市外に絞り、アウトドアに興味関心がある層などのセグメンテーションによって効果的な配信を行いました。
口コミ形成
大学掲示板やローカルメディア、WEB広告から流入された新規施設利用者の方々に対して、島内アンケート調査を実施し(詳細は以下に記載)、結果を随時確認することで施設利用までの障壁の主たる要因が「初めての利用の場合、雰囲気や利用方法が分からない点」であることが伺えました。
WEB広告は認知形成の効果は期待できるものの、利用促進を目的とした場合は当要因によって予約行動まで至らず、離脱してしまっていることが伺えました。
よって予約に至るまでの有効な手法は、「口コミ形成」と「施設利用風景の可視化」であるという仮説をたて、プロモーション手法の軌道修正を行い、Googleマップへの口コミ投稿促進や施設雰囲気を伝えるパブリシティを目的としたイベントの実施を行いました。
消費データとアンケート分析
予約時に取得する利用頻度や発地、年齢などの消費データと上記した島内で実施しているアンケート調査(n=33)を集計・分析し、施設利用促進への課題抽出やブラッシュアップ案の検討を行いました。
・県外からの観光客割合が45.45%と市全体(15.23%/令和5年)に比べ約3倍の値となりました。
・「管理人の対応」「自然環境」「景観」が4.5ポイント以上と非常に高い満足度となりました。一方で、「トイレ」は3.9ポイントと最も低い値となりました。
・発地の県外割合が高い施設ということもあり、消費単価は7,001円以上が33.3%と市全体(3,039円/令和5年)に比べ2倍以上の値となりました。
・上記した「初めての利用の場合、雰囲気や利用方法が分からない点」が53.6%と最も高く、続いて「申し込み期限が1週間前となる点」が32.1%、「キャンセル期限が1週間前以降100%チャージとなる点」が21.4%となりました。天候によって利用するか否かを決めるアウトドア施設の消費行動特性と施設規約の調整が発展途上であることが伺えました。
・「遊泳可能なビーチ」が72.7%と最も高く、続いて「グランピング」が60.6%、「牡蠣などの特産品の島内販売」が54.5%、「SUP体験」「サウナ」が51.5%と利用者から求められているコンテンツとなりました。
・グランピングが選択された要因として、ただ流行しているからというだけでなく、施設利用者のアウトドア初心者層割合が高く、またキャンプサイトが島内の小高い場所にあることから運搬や設営などの負担が軽減できる、より手軽な体験ニーズがあると考えられます。
・またハード整備がされた無人島アウトドアコンテンツは、日本全国に数か所ありますが広島の特産品を掛け合わせることで、他コンテンツとの差別化を行い、県外・国外からの利用促進にもつながると考えられます。
管理人さんのお人柄や気遣い、楽しいお話に満足度100倍でした!!もっと知られてもよいスポットです。
遊泳可能にしてほしい。この島まで来て泳げないのは辛い。
船に乗って無人島へ行くことはなかなか経験できないことなのでとても魅力的だが、島での過ごし方が1回目ではわからなかった。何度か行けば島での過ごし方もわかって楽しめるのかなと思った。
おわりに
2023年に予約決済のDX化に着手する際、今後発生し得るボトルネックに関して、中期的なスパンで取り組む必要がある旨、以下の図の通り整理を行い、市担当課やDMO理事会にて協議を行ってきました。
今回、データからも利用促進に係るボトルネックのエビデンスがとれたことにより、課題に対するアプローチとして、施設の指定管理の指定に関して担当課との協議を行いました。
しかし無人島アウトドア施設は市の「自然公園」という位置づけになるため、「観光拠点」としてリソースを割いて取り組むまでの優先順位を上げづらく、指定管理の募集は当分の間は難しいという判断になりました。
島へのクルーザー移動時に牡蠣水揚げ見学を通じた海洋プラスチックなどのSDGsに関する地元漁師からのレクチャーや島内での牡蠣等の地域産品の消費促進に繋がる観光拠点になるよう、DMOとして約3年間多くのリソースを投下して市場調査やモニターツアーの実施等を行ってきましたが今回の判断により残念ながらDMOとしてもアクションプランから落とすこととしました。
中長期的なビジョンを可視化し、関係者や組織内で協議を行ってきましたが目的やリソースを考慮して意識レベルを合わせ、取組を進めていくことの難しさを痛感するプロジェクトとなりました。