事業報告

オオサンショウウオ夜間調査体験ツアーの企画実施

はじめに

広島大学で観光地域づくりに関する講演を行ったことをきっかけに広島大学総合博物館と連携してオオサンショウウオの夜間調査を軸にしたツアーを企画実施しました。

ツアー実施目的

まず初めに博物館がどのような想い、目的でツアーの企画検討に至ったかを以下の通り事前に確認を行い、ツアー内容やターゲット層を決定していきました。

  • オオサンショウウオの生息環境を体感することで同種が置かれている現状を知り、学びを深める。
  • 金額設定や広報範囲、媒体の検討・試行を行い持続可能なツアーとする。

ツアー内容とワンポイント

実施日 9月16()1115分~22
参加者人数 10名(満枠)
参加費 宿泊プラン26,000/人、日帰りプラン16,000/
主催者 広島大学総合博物館
内容
  • 保護施設訪問(在来種、交雑種、中国種、卵、幼生の観察)
  • 生息地の視察(生息環境の変容(堰、護岸))
  • 牧場にてジビエや地域特産品を用いたBBQ
  • 研究者引率夜間調査体験

目的にあった内容整理とターゲット設定

国の特別天然記念物であり、その個体数が減少しているオオサンショウウオの生息地情報が広く拡散されてしまうことは望ましくありません。また夜の川に入って行う調査に同行するという特別な体験なだけに、安全管理が行き届く範囲として、定員は10名とすることにしました。

オオサンショウウオは中部、四国、九州の限られた地域に生息しています。大阪や福岡などの大都市は比較的、短距離移動で生息地を訪れることが可能となり、実際に観察イベント等も実施されていることから当該エリアにプロモーションを実施しても十分な効果が得られない可能性がありました。よってターゲットエリアを遠方ではありますが関東圏と定めました。

持続可能な繋がり形成と口コミ効果

「オオサンショウウオ里親プロジェクト」と題して、調査中に出会うことができたオオサンショウウオがツアー後、研究者によって再捕獲された際に博物館公式SNSから発信することとしました。

ツアー終了後も参加者の方々と継続した繋がりを形成し、関心を持ってもらえるようにするだけでなく、次回開催時に当アカウントから案内を行うことで口コミ効果の波及も狙うこととしました。

またツアー利益の一部を保護活動に寄付することも予約サイト等で案内することで、価値に共感し且つ、大学の実施目的を理解する層に参加してもらえる様にしました。

市場性ヒアリングとWEB広告

関東圏の動物コミュニティに対してツアー内容と価格を博物館からヒアリングし、市場性があることを事前に確認しました。

そして以前、行った牡蠣筏の上での釣り大会に関するプロモーションでも大きな成果を上げたGoogleファインド広告を当ツアーでも活用しました。

チヌ(黒鯛)杯の記事はこちら↓↓

WEB広告ノウハウの蓄積とコンテンツ商圏調査

媒体 Googleファインド広告
配信地域 関東
配信対象 全年齢/男女
対象属性 「オオサンショウウオ」「生物調査」等のキーワード検索ユーザー

配信結果

表示回数 279,429回
クリック数 4,645回
クリック率 1.66%
獲得件数 210件
獲得率 4.52%

標準的なクリック率を獲得することができ、クリック単価も安価に抑えることができました。

今回は定員が10名であったため画面を60%スクロールし、且つ予約ページの日付をクリックするアクションを「獲得」と設定し、獲得件数、獲得率ともに申し分ない数値を得ることができました。

一方でGoogleファインド広告は学習期間が5日間程度とされており、プロモーション開始時期が遅れたため、広告期間を十分に確保することができず、スケジューリングが学習期間に食い込んでしまい、ファインド広告の強みを発揮する前に配信が終了し、CVRに十分に結びつけることができない結果となりました。

残枠の再販計画

今回が初開催となるため大きな口コミ効果を期待することはできず、また予約ページやプロモーションに利用するのに適したツアー内容を伝えられる適当な写真素材等もありませんでした。また上記した通り、飛行機などの移動を伴う関東圏をメインターゲットエリアとした高単価ツアーとしていたためWEBプロモーションだけでは満枠まで集客ができない場合も予め想定しておく必要がありました。

よって関東圏からの参加者のみで満枠に達しない場合、県内を対象に日帰りツアーとして再販をかけるように予め設計することで、催行率を高め実施ノウハウを蓄積し、次回以降により良い内容にできるように計画しました。

県内向けのプロモーションではディスカバー東広島の公式WEBサイトや公式LINE等のSNS、広島県観光連盟のオウンドメディアにて実施しました。

結果、県外参加者4名、県内参加者6名の計10名で満枠となりツアーを催行することができました。

ツアー風景(NHK報道)

おわりに

有効な集客手法

今回のツアー催行日は3連休の初日であったため、比較的早めにスケジュールを決める方々が多いことが予想されます。また飛行機や新幹線の移動を伴う遠方への旅行は近距離よりも前もって準備をする傾向があるため次回も関東圏をターゲットエリアに設定してWEB広告を実施する場合は2ヶ月前から2週間程度かけて予算を消化するようなスケジューリングが適当と考えられます。

またツアー利益から広告費用を捻出して集客するだけでなく、環境保護や動植物の生態調査を行う団体等に直接アプローチを行うことで、博物館のツアー実施目的に共感する層の方々に多く参加してもらえるだけでなく、運営予算を圧迫することなく持続的にツアーを実施することができると考えます。

安定的な運営と満足度UP

また今回、旅行業免許を持たないディスカバー東広島が予約問合せ窓口となったため、参加者から事前決済によって直接参加費を徴収することができませんでした。万が一、急なキャンセルが発生した際にチャージを徴収できず、ツアーが赤字となってしまう危険性がありました。

また予約者からの問合せがDMOに直接入り、回答までにタイムラグが発生することで申込者の満足度にも影響が出てしまうため、次回以降は事前決済機能を持つ旅行会社から直販することでチャージを確保しつつ、問い合わせも対応も行うことでツアー収益と申込者満足度を高めていくことが望ましいと考えます。

新たなターゲット設定

研究者引率による夜間調査、希少動物の保護活動等の特別な体験価値によって、高単価ツアーとしても無事催行することができました。

一方でツアー実施が9月と台風などの天候条件に左右されやすい時期となるため、遠方からの集客は一定のリスクを伴います。本ツアーはオオサンショウウオの夜間調査が軸となるため、悪天候時にそれにかわる代案の設定も困難となります。

よって広島市内宿泊施設のホテルコンシェルジュと連携し、県外からの宿泊者の方々に対してエクスカーションツアーとして販売することで、天候等の急なツアー内容の変更や中止に対しても、遠方からの集客に比べクレーム等に繋がるリスクを抑えながら企画実施することが可能と考えます。

さらにオオサンショウウオは世界最大の両生類となるため、本ツアーは自然保護活動が盛んであり、広島市への来訪者数も多い欧米豪を中心とした外国人宿泊客の方々も新たにターゲットとして見込むことが可能となります。

通訳や生物に知見のある広島大学の留学生がアテンドすることで、博物館のオオサンショウウオ保護に関する取り組みを世界に発信する機会にもなると考えます。

観光による地域づくり

さらにツアーの価値を高めていくために、沿岸部(安芸津町)で現在行われている干潟再生プロジェクトへの視察や本市に隣接する竹原市の干潟に生息しているカブトガニの観察等、周辺市町にある貴重な自然資源との連携により、県外や国外からの参加者に対して非日常体験を提供する機会になると考えています。

今後も主催者の実施目的に沿い、そしてその価値に共感する方々にコンテンツを届けていくことで、地域資源を観光の力で次の世代に繋いでいく役割をDMOとして果たしていきます。

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